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金融システム不安を封じ込めろ―米国の流動性規制緩和が握るカギ

QUICK Market Eyes=大野弘貴

18日の日経平均株価は午前中に300円近く上昇したものの、後場に入って下げに転じるなど値動きが荒いままだ。短期的にはVIX指数(注1)がリーマン・ショック時の水準を上回るなどボラティリティの高い展開が続いていることから、積極的な株式の買い入れは見込みにくい。ただ、市場が落ち着くにつれて徐々に中銀の積極的な緩和効果も期待できる。

■市場の関心は「信用」へ

目先の更なる株価下落や相場のクラッシュを引き起こす要因は何か。あるヘッジファンドのデリバティブ取引担当責任者は「短期的にはクレジット市場次第」と指摘する。「デフォルトが相次ぐ状態にならなくとも、足元ではBBB格の債券残高が過去最高に膨れ上がっている。景気減速が鮮明になることで、これらの債券が一斉にBB格に格下げされた場合、ハイイールド債への投資制約がある運用は調整を余儀なくされる。この場合に生じるアンワインド(注2)の動きは計り知れないものがあり、相場には相応のインパクトを与えよう」

上述の懸念に対しては、17日にFRBが発表したCP買い入れが一定の効果を発揮しそうだ。CPは企業が短期資金の調達に用いる手段だ。これをFRBが買い入れることで、COVID-19により悪化した企業の資金繰りを改善する効果が見込める。エバコアISIは17日付リポートで「多くの企業の資金繰り懸念を和らげる重要なステップだ」との見方を示した。

CNBCが報じた「規制当局、コロナウイルス問題を受けて銀行の流動性規制緩和を検討か(原題:Regulators consider loosening bank liquidity rules amid coronavirus crisis, could boost loan volume)」は今後のマーケットを見極めるうえで示唆に富んでいた。

■流動性規制の緩和はインパクト大

当該記事によると、「米連邦規制当局が、COVID-19による銀行への金融圧力を軽減するため、銀行に対する流動性規制の緩和を検討している」という。筆者は、かつて銀行の市場・流動性リスク部門で勤務していた経験があるが、記事に書かれた内容が実施された場合、かなりのインパクトを与えるものと考えている。

当該記事で述べられている規制自体、リーマン・ショックを契機とした世界金融危機時に発生した流動性危機に対応する目的で制定されたものだ。足元においては、企業の資金繰りを支援すべき立場にいる銀行自体も厳しい状況に置かれていると考えられる。これは、FRBの緊急利下げを契機とした債券利回りの低下により更なる利ザヤ縮小に追い込まれていることや、融資した企業が倒産することで貸倒引当金を積み増す必要があること、低格付け企業に融資することで自己資本比率が低下する可能性があるなどといった懸念から生じているものと考えられる。

こういった状況の中では、企業に融資する以前に、銀行自体の経営を守るというインセンティブが働く状態となってしまい、市場にマネーがあふれているものの、企業に行き渡らないという事態が発生してしまう。

その一因を担っているのが金融規制になる。記事で述べられた流動性規制については、おそらく流動性カバレッジ比率(LCR)(注3)のことを指していると考えられる。この規制は、今後1カ月間のストレス時において、銀行の資金繰りが滞りなく遂行できるよう、流動性の高い資産を一定程度保有するよう求めるものだ。主として、現金・中銀預け金、信用格付けの高い国債などが挙げられる。

この規制が緩和されることによって、一定額を国債保有せざるをえなかった資金が、企業融資に回る可能性も考えられる。また、これだけにも関わらず、企業融資を促進させる方針や、それに伴い生じえる銀行の負担を軽減するような仕組みが発表される可能性もあり、注目したい。

短期間で急激な下落に見舞われた世界の株式市場だが、足元においても、これまでに体験したことのない事態に直面するかもしれないとの恐怖に覆われている状態だ。それでも、金融市場のクラッシュを防ごうと各国政府、中銀は前例のない措置で対応している。大きな損失を被ったファンドの清算なども考えられるが、金融システムの不安が後退することで、徐々に金融市場が落ち着きを取り戻す動きに期待したい。

▼VIX指数(恐怖指数)とは(注1)

シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500を対象とするオプション取引ボラティリティを元に算出、公表している指数で英語では「investor fear gauge」、別名Volatility Index(略称:VIX)と呼ばれているもの。 将来の投資家心理を示す数値として利用されており、一般的にVIXの数値が高いほど投資家相場の先行きに不透明感を持っているとされている。 通常は、10から20の間で推移することが多いが、相場の先行きに大きな不安が生じた時には、この数値が大きく上昇するという傾向がある。(「金融用語集」より)

▼アンワインドとは(注2)

保有ポジションを巻き戻し(解消)すること。低金利の円を借りて高金利の通貨などで運用する円キャリートレードを解消する場合に「アンワインドする」などという使われ方をする。(「金融用語集」より)

▼流動性カバレッジ比率(LCR)とは(注3)

国際業務を行う銀行の保有自己資本比率等を定めたバーゼル3で義務化が決まった短期の安定的資金確保に関する規制の一つ。金融危機などで30日間継続するストレス下においても流出する資金額以上に流動資産を調達し、銀行が業務を継続できることを目的として導入された基準。 流動性カバレッジ比率(LCR)=高品質の流動資産÷30日間の純資金流出額が100%以上となるよう2019年の完全実施に向けて流動資産の保有割合の引き上げが段階的に進められている。(「金融用語集」より)

 

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著者名

QUICK Market Eyes 大野 弘貴


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