日経QUICKニュース(NQN)=藤田心
国際商品市場で金先物相場が上昇している。ニューヨーク商品取引所(COMEX)では、取引の中心である6月物が日本時間7日の取引で一時1トロイオンス1742.6ドルと中心限月として2012年11月下旬以来、約7年4カ月ぶりの高値を付けた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大や、各国中銀による金融緩和が金の買いを誘っている。市場関係者に金高の背景と今後の見通しを聞いた。

※NY金先物は一段高に
■芥田知至・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員
「新型コロナ懸念で上昇続く、1800ドル視野に」
欧米で新型コロナの感染者数が拡大し、日本では緊急事態宣言が発令されようとしている。新型コロナを巡る懸念は根強く投資家のリスク回避姿勢が続く限り、安全資産とされる金に買いは集まりやすい。損失補填のための換金売りはひところから落ち着きつつある。米連邦準備理事会(FRB)など各国中銀による金融緩和も相場を支えるだろう。
各国でみられる移動や経済活動の規制で実体経済への悪影響が続く限り、金相場は上昇が見込まれる。心理的な節目である1700ドルを超えたことで短期的には利益確定目的の売りが出やすいが、時間をかけてこなしていくだろう。新型コロナの感染拡大がどこまで続くかにもよるが、1800ドル程度までの上昇は想定しておくべきだろう。
■菊川弘之・日産証券主席アナリスト
「株安補填の巻き戻し、目先は1700ドル台維持が焦点に」
ニューヨーク金先物の上昇の背景には株安の一服があるとみられる。新型コロナの世界的な感染拡大を背景とする株安の損失を補填するために金が売られていた面がある。現金化に伴うドル需要も落ち着きつつある。世界的な金融緩和が再認識されて金市場の資金流入を見込んだ買いが入った可能性は高い。
株価にはやや持ち直しがみられるが世界経済の先行き不透明感は変わらず、安全資産としての金の下値を支えるだろう。目先の焦点はきょうのニューヨーク市場で1700ドル台を維持できるか。キープできれば50ドルや100ドル刻みで上値を試す展開が想定され、1800ドル台乗せも視界に入る。
■大越龍文・野村証券シニアエコノミスト
「過剰流動性が演出、一段高には材料不足」
金高を演出した1つの手掛かりとして日本政府の緊急事態宣言と、それに付随する経済対策があったのではないか。世界的な金融緩和と財政出動によって過剰流動性気味となり、資金の一部が金に流れ込んだ形だ。欧米をはじめとする世界的な株高を見る限り、安全資産としてというわけではなく流動性相場の流れのなかでの上昇だろう。
今後は当面、上値の重い展開を見込んでいる。過去に1900ドル台を付けた場面では信用不安が安全資産としての金の需要を高めた。足元はそういった状況までは陥っていない。1700ドル台まで水準を切り上げたが一本調子の上昇には材料が少なく、力不足だ。
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