日経QUICKニュース(NQN)=藤田心
外国為替市場でメキシコの通貨ペソの下値不安がくすぶる。メキシコも加わる、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国による「OPECプラス」は日本時間13日未明、原油の大規模な協調減産で最終合意した。メキシコは当初の国別の減産枠、日量40万バレルに難色を示し、最終的に10万バレルに決まった。減産幅の30万バレル縮小を勝ち取ったメキシコだが、原油相場の反発機運が乏しいため、この外交的な勝利はペソ高につながるには力不足のようだ。
■原油安と新型コロナでペソ安進行
2月に1ドル=18~19ペソ台での動きだったメキシコ・ペソ相場は、3月に入り下げ足を速めた。産油国の通貨であるペソは原油価格に振らされやすい。新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、OPECプラスの協調体制がいったん崩壊したのも響き、3月下旬には過去最安値の25ペソ台まで下落した。日本時間4月13日時点でも23ペソ台半ばと安値圏にとどまっている。

メキシコ・ペソは3月に1ドル=25ペソ台に下落
■減産幅縮小も、需要減は補えず
9日のOPECプラスによる緊急テレビ会合で、メキシコは当初の減産枠を拒否し、OPECプラスによる日量1000万バレルの減産は暫定合意にとどまった。会合後、メキシコのエネルギー担当長官はツイッターに「今後2カ月で日量10万バレルの減産を提案する」と投稿した。OPECプラスの減産は結局、970万バレルに落ち着いた。暫定合意から最終合意への全体の縮小幅はイコール、メキシコの減産の縮小幅だ。
メキシコは原油安に備えてオプション契約を結んでいる。このため備えを怠っていた他国と同じ条件下での減産に不満があったとみられる。「国営石油会社ペメックスが経営危機にあり、施設の老朽化でもともと減産傾向にあった」(ソニーフィナンシャルホールディングスの石川久美子氏)のも、主張の背景にあったようだ。
ただ、この外交的な勝利がペソ高を演出するとみる向きは少ない。ニューヨーク原油先物は日本時間13日の取引では、聖金曜日の祝日前である9日の清算値を上回っているものの、反発力は鈍い。今回の減産規模だけでは新型コロナに伴う需要減を補い切れるとの見方は少ないためだ。
■輸出先の米国がカギ
結局は「新型コロナ終息の兆しと原油相場の明確な持ち直しがないと、ペソ買いには動きにくい」(マネースクエアの八代和也氏)。メキシコは3月末に新型コロナ感染拡大を受けて緊急事態宣言を出したばかりで「経済の下押し懸念もペソの重荷」(同)との声が漏れる。
みずほ証券の折原豊水氏は「主要輸出先である米国の景況感が年後半にかけて回復するかどうかがポイントで、当面は投資家の様子見姿勢は強いのではないか」と話す。「新興国通貨のなかでは選ばれにくさがある。対ドルでは短期的に安値の25ペソ台が意識されやすい」(ソニーフィナンシャルの石川氏)と、さらなるペソ安への警戒は怠れないようだ。