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木材価格の上昇余地―マーケット・リスク・アドバイザリー・新村氏

2020年は米中通商協議の妥結からスタートしたが、その後のコロナショックの影響で世界経済は顕著に停滞している。その後、一連の経済対策によって多くの商品価格が上昇に転じたが、年初来の上昇率がプラスになっているものは少なく、原稿執筆時点で弊社が重要としてウォッチしている70品目(株や債券、ドル指数を含む)の中で15品目に留まる。15品目の中にはビットコインや鉄鉱石、金などが並ぶがシカゴ木材も名前を連ねており、4月の最安値である251.5ドル/千ボードフィートから448.0ドルへと+78.1%も上昇、年初来の上昇率も+10.5%となっている。

※シカゴ木材先物の推移
※シカゴ木材先物の推移

■住宅販売は回復基調

木材はその他の商品と同様に、需要・供給両面の影響を受けるが、今回のコロナウイルスの問題発生により住宅市況が落ち込み、需要は急減速した。その後の財政出動や金融緩和による長期金利の低下を受けて住宅着工許可件数は底入れしたようだ。米国の低金利政策による長期金利の低下や、コロナウイルスの感染拡大一服を受けて住宅販売は確かに回復しており、米中古住宅在庫も2000年以降の最低水準のままである。これはコロナの影響で販売が急減速したが、米国の景気刺激策による住宅需要の回復に加え、住宅の供給も減少していることが影響していると見られる。米国の低金利政策が継続する見込みであることから住宅販売は回復基調をたどることになるだろう。

■年初来上昇率の理由

しかし、そもそも景気が減速する局面にあったため、年初来高値を目指すほどの上昇になっているということは、需要面のみならず供給面も価格にプラスに作用したためと考えられる。4月の段階で米大手の木材生産者であるウェアーハウザー、カナダ生産者のウェスト・フレイザー・ティンバーは減産を決定している。これはコロナの影響による需要の減速、価格下落に伴う採算悪化によるものだ。これらを背景に実際に木材の需給バランスはタイト化しており、4月時点でコンタンゴだった期間構造は全ゾーンバックワーデーションになっており、投機的な取引のみならず、実際に木材の需給バランスが供給不足に転じていることを示唆している。この間の投機筋のネットポジションの動きを見ると、4月以降の価格上昇は投機のネット買い越しが増加したことによるものだが、新規の買いが入るというよりも、既存のショートポジションの買戻しが入ったことによるものである。ショートは供給側の指標であり、これが減少しているということは供給面のリスクが高まっているため、買戻しが入ったと考えるのが妥当だろう。つまり、景気の回復期待を受けたロングの増加によって価格が上がった、というよりも供給面による上昇の可能性が高いということだ。

では今後もこの上昇基調が続くかといわれると、それは微妙だ。すでに米国では南部でコロナウイルスの感染が再拡大しており、ロックダウンの可能性があること、コロナウイルス問題を背景に米国と中国の対立が強まり、中国人による米国内の資産を購入することが、今後制限される可能性が高いためだ。恐らくそれには住宅も含まれることになると予想されるためである。

新村 直弘(にいむら なおひろ)氏
東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月に企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。また日経新聞や週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済等のメディアにも多数寄稿。著書に「調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門」、「天候デリバティブのすべて」「コモディティデリバティブのすべて」がある。

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