ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数がいち早く年初来高値を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした構造転換を受けて、勝ち組企業と負け組企業の株価パフォーマンスの差が鮮明となっている。日本でもバリュー株(低PBR)がグロース株(高PBR)に対して出遅れる中、ハイテク・グロースのテーマ以外で買われている銘柄の特徴は何か。4月以降の反発局面ではグロース株以上に堅調なファクターの存在が確認できている。
■コロナで分かれた明暗
TOPIXグロース指数からTOPIXバリュー指数を割って算出するグロース/バリュー倍率はここ数年上昇基調となっていたが、2020年3月以降、このペースが加速した。
新型コロナウイルスがもたらした外出自粛、在宅勤務の広がり、ソーシャルディスタンス(社会的距離)と言った行動変容は、デジタル技術で社会の変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)をもたらした。これらの恩恵を受けた企業の代表例がアマゾンやアップル、マイクロソフトと言った米巨大IT企業群だ。
20年4~6月期、アマゾンは主力のインターネット通信販売の売上高が前年同期比40%増となり、四半期ベースで過去最高を更新。アップルは在宅勤務や遠隔授業の広がりを背景にパソコンやタブレット端末の販売が増加。マイクロソフトはクラウド関連事業の売上高が30%増と、全体をけん引した。
一方、今期に過去最大の営業赤字になる見通しを発表した日産自動車(7201)や四半期として初の最終赤字転落、減配を発表したキヤノンなど、多くの企業が新型コロナの影響を受けて軒並み赤字転落した。企業間の業績は明暗がはっきり分かれる状況となっている。
■ROEファクターがPBRファクターを上回った
日中のファクター動向からも、グロース株である高PBR(株価純資産倍率)銘柄が、低PBR銘柄をアウトパフォームする状況が確認できる。
4~7月末までの日中ファクターリターン※を、各ファクターごとに累積した値を示したものが下のグラフだ。
この4カ月間、PBRファクターの日中リターンは累積で約10%となった。取引時間中においてもグロース株がバリュー株に対し、相対的に優位だったことを表す。
ただ、手元で算出したファクターの中では、ROE(自己資本利益率)ファクターがPBRファクターを上回っていた。ROEファクターの4カ月間における日中リターンの合計は約11%のプラスとなり、PBRファクターを約1%ポイント上回った。
■高ROE銘柄
大和証券は3日付リポートで7月最終週のファクター効果について、「国内の新型コロナウイルスの新規感染者数が連日で過去最多を更新したことや、国内の決算発表で失望された企業の大幅下落などが重なって投資家のリスク許容度が低下。相場が軟調となる中、ROEが高い銘柄の下落率が相対的に小さかった」と振り返った。
また、「円高一服から外需銘柄を中心に高ROE銘柄は底堅く推移すると期待」との見方も示されている。
下の銘柄リストは、高ROE銘柄(TOPIX500)を一部抜粋した先だ。これまでのハイテク株優位の展開に変調が見られた際は、同時に選好されていた高ROE銘柄にも売りが出ると見られるため、個別銘柄の動きも併せて確認しておきたい。
コード | 銘柄名 |
3092 | ZOZO |
2371 | カカクコム |
9434 | ソフトバンク |
3064 | MonotaR |
2127 | M&A |
3288 | オープンハウス |
1878 | 大東建 |
3038 | 神戸物産 |
2175 | SMS |
4716 | 日本オラクル |
8111 | Gウイン |
6857 | アドバンテ |
3765 | ガンホー |
6028 | テクノプロHD |
8035 | 東エレク |
9744 | メイテック |
3549 | クスリのアオキ |
3769 | GMOPG |
6920 | レーザーテク |
4307 | NRI |
※日中ファクターリターンはQUICKラボポータルサイトの「イントラデイファクターリターン分析ツール」を用いて算出した。ユニバースはTOPIX500を使用している。
上の図は、7月31日の日中ファクターリターンを算出したもの。「PBR」ファクターがプラス0.91%だが、これはTOPIX500の「高PER100社」(第1分位)の日中パフォーマンスが「低PER100社」(第5分位)の日中パフォーマンスに対し0.91%上回ったことを表している。日中の値動きのため、TOPIXバリュー指数やTOPIXグロース指数の前日比とは異なる数値となる。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
<金融用語>
ROEとは
Return On Equityの略称で和訳は自己資本利益率。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合。 計算式はROE=当期純利益÷自己資本またはROE=EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)。 米国では株主構成に機関投資家が増加し、これらの投資家が「投下した資本に対し、企業がどれだけの利潤を上げられるのか」という点を重視したことも背景となって、最も重要視される財務指標となった。 企業は、株主資本(自己資本)と他人資本(負債)を投下して事業を行い、そこから得られた収益の中から、他人資本には利子を支払い、税金を差し引いて最後に残った税引利益が株主に帰属する。したがって、自己資本利益率は、株主の持分に対する投資収益率を表すことになる。 そのため、経営者が株主に対して果たすべき責務を表した指標と見ることができる。また、それは株主に帰属する配当可能利益の源泉となるものであり、配当能力を測定する指標として使われる。自己資本収益率は株式の投資尺度としても重要である。