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気候変動対策に待ったなし、ESG投資は個人投資家へすそ野拡大

大和証券グループは8月17日、ESG(環境・社会・企業統治)投資に関するメディア向け勉強会を開催し、コロナ禍にあってもESG投資が停滞することなく、今後さらなる広がりをみせる可能性を指摘した。QUICKの機関投資家への調査からも、ESG投資が当たり前のものになりつつある意識の変化が伺え、足元では個人投資家のESGへの理解が芽生えつつある。ESG投資のさらなる盛り上がりもが期待できそうだ。

■前提として織り込まれる

大和総研による「ウィズ・コロナ時代のESG投資」では、2018年度末時点で国内機関投資家によるESG投資残高が336兆円と、2016年時点と比べ倍増した点を踏まえ、ESG投資が増加傾向にあることや、欧米や日本の機関投資家向けアンケートの結果からESG投資で銘柄を除外・選定する際に重視するテーマ・項目が紹介された。

8月のQUICK月次調査・株式では、ESGを判断材料に取り入れるESG投資について聞いた質問で、4割の投資家が「企業活動の前提として織り込まれていき、特別視するものではない」と回答した。2番目に多かった「世界的な潮流として、今後大きく発展」(22%)に倍近い差をつけた。機関投資家は伝統的な投資に非財務情報を織り込む形でESG投資が今後ますます発展していくとみる向きが強かった。

「国内での発展は限定的」や「一時的なブーム」との回答はあわせて1割程度にとどまっており、機関投資家にとってESG投資は当たり前のものになりつつある。

■気候変動のリスク

セミナーではコロナ禍で「S(社会)」の重要性が増したことや、2019年に発生した自然災害による経済的損失(1は位日本台風19号による被害で損失額が150億ドル、また3位にも台風15号が損失額100億ドル)で、気候変動への適応は待ったなしの状態にあると指摘した。石炭をはじめとする化石燃料から投資を引き揚げるダイベストメント額が2013年以降、右肩上がりにあることも踏まえ、異常気象や気候変化が金融環境への悪影響を及ぼす物理的リスク(台風に被害による損害保険会社の保険料支払いの急激な増加など)や気候政策やテクノロジーの進化がもたらす移行リスク(化石燃料の価格下落による事業投融資や投資先株価の下落など)について述べた。ESGを巡る課題として、「利用可能なESG関連情報の制約」、「ESG投資と金銭的リターンの関係性」「ESG要素の将来予想に対する本質的な難しさ」「専門知識を活用できる体制整備」の4点を挙げ、実務上の課題が指摘されつつも、規模の拡大が続いているほか、気候変動は金融システム上のリスクであると認識されており、金融当局の関心も高まっているとの見解を示した。

■サブプライムローンをはるかに超える

今年1月には国際決済銀行(BIS)が報告書で気候変動による金融危機への警鐘として「グリーンスワン」を提唱。報告書内では、温暖化阻止のため二酸化炭素(CO2)排出量に強い制約(カーボンバジェット)が加わると、使用できない化石燃料が生まれ、最大18兆ドルの座礁資産が発生するとした。世界金融危機の引き金となったサブプライムローン(1.3兆ドル)をはるかに超える大きさでの影響が懸念される。

※化石燃料資源ファンド・ETF価格推移

■SDGsは企業戦略の一環

セミナーではSDGsの認知度が加速している点や日本がSDGsを重視する訳について解説がなされ、社会課題などSDGs達成には民間資金の活用が不可欠であることから資金調達の1つとしてESG投資があるとの見方も示された。コロナ禍で「S(社会)」への関心が高まっている背景には、19年8月に米主要企業で構成する「ビジネス・ラウンドテーブル(BRT)」で「株主至上主義」の修正を宣言したことがあったと指摘した。コロナ禍での労使関係や労働環境、警官暴力による黒人男性の死亡事件(#BlackLivesMatter、#BLM、「黒人の命も大切だ」運動の発端)などを経て、企業価値の維持や向上のためのリスク管理および企業戦略の一環として注目を集めており、今後も続く流れにあるとの見解を示した。

■「個人投資家にESGへの理解が」

また個人投資家にもESG投資の潮流が広がっており、女性活躍推進企業「なでしこ銘柄」や脱プラスチックに関連する銘柄などへの関心が高まっているという。みずほ証券は17日付リポートで、7月20日に新規設定された「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」の純資産総額が4000億円を超えたことは、「個人投資家にESGへの理解が芽生えつつあることを示唆する」と指摘した。21日には、いちよしアセットマネジメントが「いちよしSDGs中小型ファンド」の運用を始める。当ファンドは大型株に比べ、SDGsに関する情報の開示や発信に乏しい中小型株に焦点を当て、ボトムアップ調査を通じて実際の活動と事業利益が結びついた銘柄を選定している。「個人投資家のESG投資は始まったばかり。今後は営利の追及だけでなく、環境や社会の課題解決も担える企業が評価されることが当たり前となるのではないか」(国内運用会社ファンドマネージャー)との声も聞かれる。

※ESG関連ファンド

QUICK Market Eyes  川口究)

<金融用語>

SDGsとは

Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)の略称。17のゴールと169のターゲットから構成される世界共通の目標で、地球上の誰一人として取り残さない平和で豊かな社会の実現を目指す取り組みのこと。貧困や飢餓、福祉や教育、人権、環境、エネルギー、経済的不平等など国際社会の包括的な課題解決に向けて、すべての国連加盟国が行動を起こすことが求められている。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれた。

著者名

QUICK Market Eyes 川口 究

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