9月24日正午更新のダイヤモンドオンラインが、佐川急便を傘下にもつSGホールディングス(9143)と日立物流(9086)が資本・業務提携を解消する方針を固めたとする記事を掲載し、株式市場に衝撃が走った。
■資本業務提携の見直し
SGHDは日立物流の発行済株式数の約3割を保有しており、観測の通り資本提携を解消して市場で売却されるようなら株式需給の悪化につながるとして、日立物流株式の一時的な急落を誘った。その後、日立物流が資本業務提携に関して「解消ではなく持分比率の変更を含めた見直しについて、同日開催の取締役会の議題としている」とするプレスリリースを発表したことで、過度な警戒感が後退した。
提携のシナジー効果が小さかったとみるか、SGHDと日立物流の実質的な資本提携解消で保有株式の譲渡額に不満をもつか、などで評価は分かれよう。ただ、2016年から継続していた資本業務提携を見直す大ナタをふるった決断は大いに注目される。
■大型買収は成長につながるか
戦略的事業の取り込みは、古くはブリヂストン(5108)のファイアストン買収、日立製作所(6501)による原子力発電会社買収、最近では日本郵政(6178)による豪物流会社の買収から売却へのてんまつなどが想起される。
大型買収が果たして成長につながるか、その行方が注目される案件を抱えているのが、セブン&アイ・ホールディングス(3382)だろう。米国の石油精製会社マラソン・ペトロリアムが運営するコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」の買収に関しては、ことし2月から3月にかけて、買収の観測記事や、買収を断念したと伝わるなど前ぶれとなる報道が錯そうした。8月に日本円で2兆円規模で買収すると発表した。
■事業構造改革
事業構造改革という点では、足元でニコン(7731)の株価が歴史的な安値水準にあることも気になるところ。半導体関連の側面ももつが、映像事業の赤字解消への施策が大きな課題である。直近ではミラーレス一眼カメラ「Nikon Z6」と「Nikon Z7」の後継機種が年内に発表される可能性がネット上で話題になった。採算が厳しい映像部門事業を今後どう取り扱うかは投資家の関心事だ。モノ言う株主との対話やカメラ事業で大胆な施策を打ったオリンパス(7733)との姿勢の違いは、株価パフォーマンスにも表れている。
24日にSGHDと日立物流、三菱UFJリースと日立キャピタルのビッグニュースが飛び込んできたことが、上場企業の事業構造改革への取り組みへ投資家の目線を改めて向けさせる契機になるのではないか。(QUICK Market Eyes 山口正仁)
<金融用語>
シナジー効果とは
シナジーは共力作用の意味を持つ英語で、シナジー効果とはM&A(企業の合併・買収)などを通じて複数の企業や事業を統合した場合、それぞれの価値を単純に足し合わせた合計よりも大きな価値を生み出す相乗効果のことを指す。 統合する相手企業の公正な価値評価にはシナジー効果を含めるのが妥当とされる。シナジー効果の例として、商品サービスの拡充や販売チャネルの拡大による売上げ増加、製造・販売拠点や物流など重複する機能の統廃合によるコスト削減、技術・ノウハウの共有や財務統合による節税効果などがあげられる。