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商用EVの米ニコラ、特許で測る実力値(IPリポート VOL.39)

最終更新 2020/10/1 10:30 EV 注目銘柄 特許 米株 ニコラ IP最前線

米電気自動車(EV)メーカーのニコラは、ゼネラル・モーターズ(GM)との資本提携を発表した直後、空売り投資家によるレポートの発行を機に株価が急落し、最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれた。第二のテスラとの期待を受けて株価が上昇してきたニコラだが、その技術力はいかほどか。特許の側面から評価する。

難易度が高いEVトラックの開発

EV乗用車を手掛けるテスラは実際に乗用車を販売し、四半期ながら事業の黒字化にも成功した。一方、商用車を手掛けるニコラのEVトラックはいまだ発売に至っていない。この理由は価格とパワーの2つにあると考えられる。

テスラの車は高額だ。販売数の増加に従い最近では廉価版の車種を投入し始めているが、当初はかなり高額ながら走行性能に優れ、環境意識の高い富裕層に受け入れられた。一方、トラックには高級車という需要がない。輸送業者からすれば、採算確保の観点からトラックの価格は安いほどよく、環境保護への協力姿勢をアピールする広告宣伝のような需要もさほど大きくない。ニコラが業績を拡大するには、車体価格の引き下げが必須となる。

トラックには大きなパワーが必要だが、貨物の収納スペースを確保するためモーターとバッテリーを収容するスペースが限られる。モーターを使うEVの場合、モーターの性能でパワーが決まってしまい、燃料車のようにアクセルをふかして出力を上げることが出来ない。モーターの性能を上げようとすると大型となり、さらに大型のバッテリーも必要になる。ニコラが製品として発売するにはモーターとバッテリーの小型化と出力の向上が必要になる。

■電気モーターとエンジンの特性

  

出所:山根水素エネルギー研究所

競合と比べて少ない特許

ニコラの特許出願件数は2015年から2020年までで45件で、技術分野ではモーター関連が8件、バッテリー関係が3件になる。

■ニコラの特許出願件数



出所:PatentSQUAREにより日本知財総合研究所作成

世界のEV特許出願でトップクラスのトヨタ自動車や韓国ヒュンダイ(現代自動車)は既に2000件程度の特許を出願している。もちろんこの数字は乗用車を含んでいるが、同じ技術分野でしのぎを削っていくには、ニコラの45件は物足りない数字と言える。

■世界のEV関連特許出願TOP5



出所:特許調査ソフト「Orbit」により正林国際特許商標事務所作成

ニコラが資本提携を発表したGMは、EV特許に関してはフォードモーターやトヨタ、韓国メーカーに後れており、今回の資本提携は良い組み合わせではある。GMの資金力を使って技術開発に力を入れれば発売を前倒しできるかもしれない。

発売できても儲からない?

今まで、完成車メーカーは自社で基本的な技術を開発し、仕様を細かく定めて部品メーカーに発注することで、車の技術は完成車メーカーに集中し、相応の利幅をキープできた。ところが、自動運転や電動化など「CASE」が浸透するなかで、主要な部品や設備を外部企業に頼らざるを得ず、完成車メーカーから中核技術が分散するようになる。ニコラは開発の多くを外部の有力企業に依存している。高価な車体価格を設定できなければ利幅が低水準にとどまる可能性が高い。(2020年10月1日)

 

日本知財総合研究所 (三浦毅司 takashi.miura@jipri.com 電話080-1335-9189)

(免責事項)本レポートは、レポート作成者が信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、レポート作成者及びその所属する組織等は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であること、重要な事項の記載が欠けていないこと、将来予想が含まれる場合はそれが実現すること及び本レポートに記載された企業が発行する有価証券の価値を保証するものではありません。本レポートは、その使用目的を問わず、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、その使用結果について、レポート作成者及びその所属組織は何ら責任を負いません。また、本レポートはその作成時点における状況を前提としているものであって、その後の状況が変化することがあり、予告なく変更される場合があります。

著者名

日本知財総合研究所 三浦 毅司


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