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値幅制限(ストップ高、ストップ安)とは何か?制限値幅は4倍に拡大、株式市場の混乱を防ぐ重要なルールを解説

(初回公開日:2020年10月8日11:30)

株式取引における最近の一大ニュースと言えば、東京証券取引所(東証)のシステム障害による全銘柄売買停止です。株式取引が停止し、株価が「値つかず」となったことに驚いた方も多いと思います。一方、東証には、今回のような事件で株式市場が混乱し、株価が適正な価格から逸脱するのを防ぐルールがあります。

個別銘柄の株価は、一日の上限価格のストップ高、下限価格のストップ安が決まっており、その範囲でしか動きません。これを「値幅制限」と呼び、個別銘柄を取引する時には知っておくべき大切なルールです。また、上限価格と下限価格は一定の条件で拡大しますが、2020年8月より拡大ルールに変更がありました。この変更点も含めて、値幅制限について解説します。値幅制限のポイントを頭に入れながら記事を読んでみて下さい。

■値幅制限のポイント

  • 個別銘柄の一日の値動きの上限(ストップ高)、下限(ストップ安)は決まっている
  • 一日の株価の上下を限定することで、投資家の恐怖心や過熱感を和らげる狙いがある
  • 制限値幅の幅は決まっているが覚える必要はない
  • 制限値幅は4倍に拡大されることがある

■値幅制限とは

ストップ高、ストップ安という言葉を聞いたことがあると思います。値幅制限の上限まで株価があがることをストップ高、下限まで株価が下がることをストップ安と呼びます。東証は、一日の株価変動を限定するため値幅制限を設定しています。値幅制限の制度によって、株価はその日に決められた上下の幅でしか動きません。

株価は様々な要因で動きます。記憶に新しい2020年の新型コロナショック、2011年の東日本大震災、2008年のリーマン・ショックなどでは、株価は急落しました。経済を揺るがす大きな出来事が起こると先行き不透明感から株は売られます。しかし、個別銘柄の一日の株価は値幅制限の枠を超えた価格で取引されることはありません。

■値幅制限をする理由

値幅制限は、株価の暴騰や暴落を防ぎます。新型コロナショックのように経済を揺るがす大きな出来事が起こると、不安が高まります。投資家心理の悪化は売りを加速させます。このような環境下では、売りが売りを呼びどこまでも株価が下落する可能性がありますが、値幅制限があることでその日の株価の下落は限定されます。

一日の株価の上下を限定することで、投資家の恐怖心や過熱感を和らげる狙いもあります。株価下落局面では、その日の下限が決まっているので、一日で底なしに株価が下がり続けるという恐怖心は小さくなります。

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で株価が下落した免税店のラオックス(8202)の例を見てみましょう。客数減少などで店舗の閉店や休業を進めていると報じられたラオックスは、2020年3月9日の取引で一時、制限値幅の下限(ストップ安水準)となる前週末比50円安の121円まで売られました。しかし、その後買い戻され、38円安の144円でその日の取引を終えています。

値幅制限は、投資家に正常な判断を促します。相場が急落した場合、不安心理から安すぎる価格で売り注文を出してしまう可能性がありますが、値幅制限によりその日の下限が決まっているので、投資家は不安に煽られすぎることなく、落ち着いて考えることができます。

■ストップ高、ストップ安となる制限値幅

値幅制限の上限と下限は、東証でルールが決められています。具体的には、前日の終値または、前日に株価がつかなかった場合はその日の最終気配値段を基準に制限値幅が決められています。終値が5,000円未満は上下700円、7万円未満は上下1万円など基準値段の価格によって幅は異なります。

 

<制限値幅表(出所:東証ホームページ、10/7時点)>

基準値段 制限値幅
100円未満 上下 30円
200円未満 50円
500円未満 80円
700 円未満 100円
1,000円未満 150円
1,500円未満 300円
2,000円未満 400円
3,000円未満 500円
5,000円未満 700円
7,000 円未満 1,000円
10,000円未満 1,500円
15,000円未満 3,000円
20,000円未満 4,000円
30,000円未満 5,000円
50,000円未満 7,000円
70,000円未満 10,000円
100,000円未満 15,000円
150,000円未満 30,000円
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30,000,000円未満 5,000,000円
50,000,000円未満 7,000,000円
50,000,000円以上 10,000,000円

制限値幅の上限まで株価が上昇することをストップ高、下限まで株価が下落することをストップ安といいます。同じ銘柄でも日によってストップ高、ストップ安の価格は異なります。ストップ高をつけた銘柄はその日、それ以上株価は上昇しませんし、ストップ安はそれ以下に価格は下落しません。ストップ高のまま一日の取引を終えることもありますし、一時ストップ高をつけた後、株価がストップ高より下がることもあります。同じようにストップ安のまま取引終了もありますし、ストップ安後、株価がストップ安より上がることもあります。

■値幅制限の事例

値幅制限の具体的なイメージを見てみましょう。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)のある日の終値は419.9円でした。基準値段が500円未満の場合、制限値幅は上下80円となっていますので、翌日の取引では、三菱UFJの制限値幅は、339.9円から499.9円となります。ストップ安は339.9円、ストップ高は499.9円ということです。

ファーストリテイリング(9983)のある日の終値は6万6500円でした。基準値段が7万円未満の場合は、制限値幅は上下1万円となっています。翌日の取引では、ファストリの制限値幅は、5万6500円から7万6500円となります。ストップ安は5万6500円、ストップ高は7万6500円です。

■制限値幅が4倍に拡大される場合

売り買いの需給が偏り売買が成立しない日が続いた場合、値幅制限は拡大されます。具体的には、2日間連続して下記の2要件のいずれかになった場合、翌営業日から制限値幅は4倍に拡大されます。

  1. ストップ高(安)となり、かつ、ストップ配分も行われず売買高が0株
     
  2. 売買高が0株のまま午後立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ高(安)で売買が成立し、かつ、ストップ高(安)に買(売)呼値の残数あり
     

東京証券取引所はこれまで3営業日連続ストップ高(安)としていた連続日数を、2020年8月3日より2営業日連続へと変更し、制限値幅の拡大幅も2倍から4倍へと変更しました。変更の理由について東京証券取引所は、最近の株式市場で「特に需給の偏りが顕著な銘柄においては、長期にわたって売買が成立しない事例」があるとし「円滑な売買成立及び速やかな価格発見に対する投資者のニーズが一層高まっている」ためとしています。

20年8月の新ルール導入以降、制限値幅が4倍に拡大された事例を見てみましょう。妊婦や育児向けのアプリを提供するカラダノート(4014)は、中部電(9502)と資本業務提携する発表を受け、22年2月8日の東京株式市場で2日連続の買い気配となりました。これを受けて、9日に値幅制限の上限が通常の4倍に拡大。基準値が1064円だったので通常であれば300円の値幅が、4倍となる1200円となり9日の値幅制限の上限(ストップ高)は2264円に拡大されました。9日は、1400円で取引を始め、一時、通常の値幅300円だった場合のストップ高1364円を超える1523円まで上昇し、1228円で取引を終えました。

制限値幅は前日の終値を基準に決められていますが、その細かい内容を必ずしも覚えておく必要はありません。その日の制限値幅を確認する一番簡単な方法は、証券会社の取引ツールの注文画面を見ることです。株式売買をする時は、表示される制限値幅を参考にその範囲で注文を出せば、その日に売買が成立する可能性が高まります。一方、制限値幅の上限と下限を超えた価格で注文を入れた場合は、その日に売買が成立することはありません。

 

■更新値幅とは

急激な価格変動を防ぐため、株価は一定時間に更新する値幅が決まっています。これを気配の更新値幅といいます。取引所は、直前の価格と比較して値幅の範囲内の時に、次の売買を成立させます。気配の更新値幅は直前の価格を基準としています。注文状況が偏り更新値幅を一気に何段も超えて売買が成立しそうな時は、すぐに売買を成立させずに更新値幅の範囲内で特別気配を表示します。

特別気配は取引時間中であれば始値決定前でもザラ場中でも表示されます。直前の価格よりも売買が高く成立する場合は特別買い気配、直前の価格よりも売買が低く成立する場合は特別売り気配となります。特別気配が出ている間は売買が一時停止し、売買方式がザラバ方式から板寄せ方式に変更になります。特別気配を表示しても反対の注文が入らず売買が成立しない場合は、3分間隔で特別気配を更新し、徐々に売買が成立する値段に近づけていきます。最終的には、その日のストップ高、ストップ安水準が特別気配の上限・下限になります。

■値幅制限とサーキットブレーカーの違い

相場が異常に加熱しすぎ大きく変動した場合、取引を一時中断するサーキットブレーカー制度が発動されます。取引を一時中断することで投資家が冷静さを取り戻し、相場を正常に戻すことを目的としています。ニューヨークの株式相場が過去最大の下落率を記録した1987年の「ブラックマンデー」をきっかけにニューヨーク証券取引所がサーキットブレーカー制度を導入しました。日本では1994年から取り入れています。

これまで説明した値幅制限は、個別銘柄の話しでしたが、日本のサーキットブレーカー制度は個別銘柄ではなく、先物取引やオプション取引を対象としています。例えば先物価格が一定数値を超えて変動した場合、該当取引は一時中断されますが、その時、個別銘柄の売買が制限されることはありません。一方、米国では、先物取引やオプション取引だけでなく、個別銘柄にサーキットブレーカーが発動されることがあります。

日本のサーキットブレーカー制度は、指数先物や指数オプションが東京証券取引所が定める3段階の基準まで変動した時に発動されます。該当取引は、10分間中断されます。

■まとめ

値幅制限は、株価の暴騰や急騰を防ぐために導入されています。その日の取引の上限価格、下限価格は決まっています。株式売買をする時には、制限値幅を意識した上で注文を出す必要があります。これまで説明した値幅制限の重要さを認識した取引を心がけることが大切です。

(QUICK Money World 辰巳華世)

 

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QUICK Money World 辰巳 華世


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