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ウォルマート、特許で見えた対アマゾンの秘策(IPリポート VOL.40)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、企業業績の二極化が鮮明だ。情報通信やヘルスケア分野が好調な一方、観光や運輸、接客業は苦戦する。小売りでは百貨店など店舗を構える従来型の業態が苦戦し、米アマゾン・ドット・コムなど電子商取引(EC)が巣ごもり消費の追い風を受けている。

その中で異彩を放つのが世界最大の小売業、米ウォルマートだ。EC部門の売り上げを急速に伸ばしている。2020年5~7月期におけるECの売り上げは、前年同期比で98%もの増加となった。株価も呼応し、中長期で上昇トレンドを保っている。

市場調査会社の米eMarketer(イーマーケター)によると2018年に米国で4位だったウォルマートのECのシェアは、2020年初めまでにアップル、イーベイを抜いて2位に浮上した。

巨人アマゾンとの差は依然として大きいが、最近は定額課金型の会員制サービス「ウォルマート+(プラス)」を開始し、顧客の行動データをAIカメラで収集する実験店を設置するなど、矢継ぎ早に施策を打ち出している。

■ウォルマートのEC売上高



出所:ビジネス情報サイトBusiness Insider掲載のデータに基づき技術知財経営支援センター作成

急成長の一因はデジタル化に向けたテクノロジーと知的財産戦略がある。実は米国におけるウォルマートの特許出願件数は2012年以降、急伸している。また、IFI CLAIMS Patent Services社の調査によれば、ウォルマートの世界の特許保有件数は2019年5月の636件から2020年1月には905件まで増加した。伸び率ではS&P100の構成銘柄のうち、2位である。

■ウォルマートの特許出願件数



出所: 米国特許商標庁の公開公報に基づき技術知財経営支援センター作成

このうちデジタル化との関連で注目すべき事例がいくつかある。ウォルマートの特徴はECだけでなく、店内作業のデジタル化に注力している点だ。

①米国特許「自動ロッカー」

ウォルマートの大型店では、ECで注文した商品を店舗で受け取る設備「ピックアップタワー」を設けている。顧客は注文時に指定した店舗に出向き、高さ5m、幅2.5mの巨大なピックアップタワーから、注文した商品を自動で受け取る。

この特許の対象となる自動ロッカーは、顧客が認証コードを入力すると注文商品を取り出し口へ自動的に送り出すピックアップタワーに、返品作業を効率化する三次元スキャナーを追加している。

返品された商品を収納し、スキャナーで商品の形を読み取り、品番の識別や傷の有無を判別するなど、ピックアップタワーの機能を拡充している。

②米国特許「小売店における自動チェックアウトのシステム及び方法」

ウォルマートは2018年に顧客が店舗内で買い物をしながらモバイル端末で商品のバーコードをスキャンし、その場で精算できる「スキャン&ゴー」というシステムを試行した。

この特許はシステムの発展形で、無線タグで店内に居る顧客の位置を特定し、商品棚のカメラや重量センサで、商品の取り出しや戻し入れを監視する。両方のデータを照合して自動的に購入額を精算するシステムだ。

③店内のナビゲーション

ウォルマートは、広い店内で目的の商品を早く探せるように顧客をアシストする技術も特許化している。例えば米国特許「店内ナビゲーションシステム及び方法」は、顧客のモバイル端末からの問い合わせに対し、商品の売り場を検索して答えるシステムだ。「施設内の動的通知システム」は、店舗内の顧客の位置を把握し、顧客が好みそうな商品の近くに来ると、顧客のモバイル端末に通知する。

ウォルマートの強みは全米人口の70%が店舗から車で5分以内に暮らすという充実した店舗網だった。その強みをいかすために、店舗内のオペレーションをデジタル化して進化させ、必要な知財戦略を構築している。かつては新興のEC勢に押されていたウォルマートが編み出したのは、自らの強みをさらに磨き、デジタル時代に適合した新たなサービスを提供する明確な経営戦略だ。特許から分析する限り、ウォルマートの勢いはしばらく続きそうだ。(2020年10月15日)


技術知財経営支援センター(MOTーIP)代表理事 黒田 雄一(弁理士・技術士)

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