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「本社ビル売却」の電通G株が急伸、売却金の使い道に市場は関心

最終更新 2021/1/21 17:30 日本株 本社売却 NQNセレクト

Stock market financial growth chart on dark background.
【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】21日の東京株式市場で、電通グループ(4324)株が一時前日比7%高に迫る急伸をみせた。東京都港区の本社ビルを売却する検討に入ったと報じられた。新型コロナウイルス禍で広告収入が大幅に減少するなか、ビル売却でバランスシート改革が加速するとの見方が広がった。終値は同5.3%高の3200円だった。

■資本効率の向上を評価

「電通本社ビル」は2002年竣工。汐留地区の再開発の象徴ともいえ、鋭角と丸みを併せ持った独特のたたずまいと、築地や銀座に点在していた旧拠点を収めるための規模感から同地区で威容を誇ってきた。「将来は『電通マン』に」。太陽の光を受ける同ビルを眺めてそんな憧れを持った学生も少なくなかっただろう。

そのビルの売却報道は市場で驚きとともに受け止められた。21日に電通グループ株は一時、前日比205円(6.7%)高の3245円を付けた。新型コロナウイルスの感染拡大のあおりで広告やイベント収入が吹き飛んだ広告業界。本社ビルの売却が実現すれば、さらなる資本効率の改善が進み経営が安定するとの期待が広がった。本社ビルを巡っては「ほとんどの人が出社していないと聞く。テレワークの浸透もあって、キャッシュインカムが入る売却は自然な流れ」(国内証券のアナリスト)との声があった。

同社は2020年12月7日に、コロナ禍の収益減と海外の事業構造改革費用の計上が重荷となり、20年12月期(前期)の連結最終損益(国際会計基準)が237億円の赤字になりそうだと発表していた。19年12月期も808億円の最終赤字を出すなど、2期連続での赤字が見込まれるなか株価はさえない。

電通の業績

※電通Gの業績推移(2020年12月期は会社予想)

だが、積極的なバランスシートの見直し策が実行されるとの期待が株価の支えとなっている。

バランスシート調整として踏み切ったのが、国内外の人員体制の見直しだ。21年末までに海外事業に携わる社員6000人を削減するほか、国内事業では早期退職プログラムの実施が進められている。2年間で現在160以上あるエージェンシー(代理店)ブランドの数を6つのグローバルリーダーシップブランドに統合し、コストの削減にも取り組む方針だ。

■売却金は株主還元に?

バランスシート上の非事業資産の見直しを進める過程では、リクルートホールディングス(6098)株の一部を売却した。追加売却分とあわせて5000万株の売却により投資有価証券売却益約1790億円が前期の個別決算に特別利益として計上される予定だ。

そして今回伝わった本社ビル売却もバランスシート改革の一環だろう。

構造改革に伴う費用は短期的には業績への重荷だが、コロナ後の売上回復とともに、改革効果が表れるとの期待は強い。ビルは国内の不動産取引で過去最大級となる3000億円規模と報じられており、手元資金をどう活用するかにも投資家の関心は向く。

電通株と日経平均株価

※2019年末を100として電通G株と日経平均株価を指数化

「手元の資金が厚くなる安心感に加え、株主還元への期待が株価上昇の背景にある」と東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリストは指摘する。電通は19年8月に決めた自社株買いに約300億円を使っており、株主還元に積極的とみられている。今回も資金の一部を自社株買いに使うとの観測が市場に出ている。

 本社ビルの売却で思い出されるのが、20年末に東京・青山の本社ビルの売却を発表したエイベックス(7860)だ。同社も売却で290億円の譲渡益が発生するとの発表からほどなく最大30億円の自社株買いの実施を公表した。似た前例があるだけに、電通グループの自社株買いへの期待は強い。

仮に報道のとおりの売却額であれば、多額の手元資金を獲得することになる。得た資金を株主還元や成長にうまくつなげていけるか、投資家は注視している。広告業という慢性的な構造不況とコロナ禍でも持続的に株価を高めるには、新たな収益の柱の確保への投資が欠かせないだろう。

著者名

日経QUICKニュース(NQN) 菊池 亜矢


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