【QUICK Market Eyes 大野弘貴、川口究】米株式市場が不安定な動きを続けている。空売りの買戻しなど需給相場の側面が色濃い中で日本の株式市場の今後については様々な見方が出ている。
■節分より早めの調整局面入りも、3末の日経平均2万7000円予想は据え置き=みずほ証
みずほ証券は1月29日付のストラテジーリポートで、日経平均株価が2万8000円を割れたことから、「日本株は節分より早めに調整局面に入った」と指摘。それでも、(1)季節的にコロナ感染が減少、(2)コーポレートガバナンス・コードがより厳しい形で決まる、(3)米国でバイデン政権の大型景気対策が決まることで、日柄調整を経た後、日米株ともに再度高値をトライするとも予想した。みずほ証券は3月末の日経平均予想を2万7000円で維持した。
みずほ証券は1月28日時点で東証1部企業の17%が2020年第3四半期決算を終えた中、売上高は前年同期比2.5%減、営業利益が同1.9%増、純利益が1.6%減と20年第2四半期(それぞれ同10.3%減、17.6%減、14.5%減)から大きく改善したと集計。それでも、米企業ではアップル、フェイスブック、テスラなどの株価が好決算にもかかわらず下落したことから、「日本のテクノロジー株が今後、好決算にポジティブに反応できるかに注視」とも指摘している。
※アップル、フェイスブック、テスラの株価推移
■2月最も重要なファクターはコロナ感染状況の変化、コロナ緩和をテーマとした銘柄=野村
野村証券は1月29日付リポートで、米国市場で個人投資家がヘッジファンドをショートスクイーズ(踏み上げ)に追い込んだエピソードをきっかけに、株式ロングショートの解消に波及しかねないとの懸念からグローバル株式市場が荒れ模様となったが、「FOMC(米連邦公開市場委員会)発表、米注目企業決算の一巡、中国の旧正月入り直前、といった、ポジション調整を促すおなじみのイベントが時期的に重なっていたという事情もあった。債券、為替市場が平静を保っていることからしても、マクロ情勢の悪化はうかがえない。今回の株安は、短期調整の範囲内で収まるだろう」と指摘した。
また、「2月の日本株市場においてはセクター間のパフォーマンス逆転が生じる可能性が高まっている」とも指摘。最も重要なファクターは、コロナ感染状況の変化だという。12月から2月にかけて「飲み会」が半減することや2月から気温が上昇に転じることを踏まえると、新規感染者数は減少傾向が定着する見込みがある。さらに、ワクチン普及が徐々に視野に入る中で、コロナ禍への警戒は和らぐと予想されるとした。参考になるのは、「脱コロナ」のテーマが意識された昨年5月、8月、11月の相場だとして、「これら3カ月の株価上昇率が20年3月から12月にかけての他の月よりも高かった銘柄は、21年2月にも高パフォーマンスとなる候補とみる」との見解を示した。
他のファクターとしては、コロナ克服後に相当する22年度の業績水準が、コロナ前(15~19年度の中央値)との比較で高いこと、日本株買戻し余地が大きい外国人投資家の保有比率が高いこと、地政学リスクや新型コロナなど市場環境の不透明感が低下するなか、財務体質が保守的でないこと、株価回復が出遅れていること、を挙げた。これら5要素についてTOPIX500銘柄を5段階評価し、平均値を総合点とした。銘柄は得点順に掲載。
◎コロナ禍緩和をテーマとした銘柄リスト
コード | 銘柄名 | コード | 銘柄名 |
7013 | IHI | 5233 | 太平洋セメ |
1605 | 国際帝石 | 2502 | アサヒ |
9021 | JR西日本 | 8053 | 住友商 |
7752 | リコー | 7267 | ホンダ |
9020 | JR東日本 | 7732 | トプコン |
8801 | 三井不 | 9104 | 商船三井 |
8876 | リログループ | 7453 | 良品計画 |
8804 | 東建物 | 7733 | オリンパス |
4502 | 武田 | 2579 | コカコーラBJH |
3289 | 東急不HD | 9065 | 山九 |
8830 | 住友不 | 1802 | 大林組 |
5406 | 神戸鋼 | 7202 | いすゞ |
4911 | 資生堂 | 5711 | 三菱マ |
8002 | 丸紅 | 9435 | 光通信 |
6501 | 日立 | 9009 | 京成 |
2181 | パーソルHD | 3231 | 野村不HD |
1963 | 日揮HD | 5334 | 特殊陶 |
8252 | 丸井G | 5020 | ENEOS |
1878 | 大東建 | 6098 | リクルートHD |
8802 | 菱地所 | 9101 | 郵船 |
<金融用語>
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードとは、2013年に日本政府が閣議決定した「日本再興戦略(Japan is Back)」及び2014年の改定版で、成長戦略として掲げた3つのアクションプランの一つ「日本産業再興プラン」の具体的施策である「コーポレートガバナンス(企業統治)」の強化を官民挙げて実行する上での規範。「コード」は規則を意味するが、細則の規定集ではなく原則を示したもの。2015年6月から適用されている。 本コードは大きく5つの基本原則で構成され、(1)株主の権利・平等性の確保、(2)株主以外のステークホルダーとの適切な協働、(3)適切な情報開示と透明性の確保、(4)取締役会等の責務、(5)株主の対話、に関する指針が示されている。 「日本版スチュワードシップ・コード」が機関投資家や投資信託の運用会社、年金基金などの責任原則であるのに対し、本コードは上場企業に適用される。両コードともに法的拘束力は無いが、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」の精神の下、原則を実施するか、さもなければ実施しない理由を説明するか求めている。 本コードの策定を受け、東京証券取引所は上場制度を一部見直し、同様に2015年6月から制度改正が適用となっている。従来からあるコーポレートガバナンス報告書に本コードの実施に関する情報開示を義務付け、実施しない場合はその理由の明記が必要。政策保有株(持ち合い株)に関する方針や取締役会に関する開示などが中心であり、会社の持続的成長・中長期的企業価値向上に寄与する独立社外取締役を2名以上選任することも新たな上場制度に盛り込まれた。 2018年6月には初の改訂版を公表。政策保有株削減の促進、経営トップの選任・解任手続きの透明性、女性や外国人の登用による取締役会の多様化を求めた。