【日経QUICKニュース(NQN) 宮尾克弥】2月2日の東京株式市場でデンソー(6902)株が急伸した。同日午前に2021年3月期の連結純利益予想を前期比64%増の1120億円と、従来予想(750億円)から上方修正したのが手がかりだ。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ自動車部品の需要が回復しているとみて、市場では10日に決算を発表するトヨタ自動車(7203)株にも買いが波及している。
■市場予想も大きく上回る
デンソーの今期の純利益は市場予想の平均であるQUICKコンセンサスの952億円を大きく上回った。午前11時20分の発表後に株価は急騰する。一時は前日比430円(7%)高の6355円と、18年2月以来の水準まで買われた。終値も6351円と426円高だ。市場からは「想定以上の急回復だ」(国内証券の投資情報担当者)との声が出る。デンソーの発表後、トヨタ株にも買いが向かい、終値は前日比161円(2%)高の7455円となった。
※デンソー、トヨタ自動車の株価と日経平均株価の相対チャート。(2020年始を100として指数化)
2日はトヨタ系列の部品会社の決算発表が相次いだ。豊田自動織機(6201)、アイシン精機(7259)が今期の業績見通しを上方修正した。前日には東海理化(6995)、フタバ産業(7241)、愛三工業(7283)、大豊工業(6470)、中央発条(5992)、ファインシンター(5994)がそろって上方修正を発表している。
■「ポジティブサプライズに」
トヨタ株は半導体不足による減産報道や、新型コロナの感染再拡大への警戒から軟調で、年初から1日までにおよそ8%下落していた。この間に東証株価指数(TOPIX)は1.4%上昇しており、出遅れ感が強まっていた。「投資家の期待値が低下していたため、デンソーの決算がポジティブサプライズになった」と、いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は指摘する。
もっとも、トヨタ株の上昇が続くには景気回復の裏付けが必要になりそうだ。「トヨタは典型的なシクリカル(景気循環)かつバリュー(割安)株。足元の業績回復は理解できるが、先行きについてなお懐疑的な投資家は多い」(秋野氏)。次の焦点はトヨタの決算発表だ。どんな見通しを示すのかが株価の行方を決めるだろう。