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米国でも遠いキャッシュレス社会 LA発ニュースを読む

知人の美容師は現金と小切手しか受け取らなくなった。米国ではコーヒー1杯でもクレジットカードで支払うのが一般的なので非常に不便。彼は失業保険を受け取っていて、クレジットカード会社から支払い記録が残ることを恐れている。小切手は換金せず、手元に保管しているそうだ。記録が残らない収入を得る失業保険受給者は少なくないとの話が聞こえてくる。

米労働省が5日発表した1月の雇用統計は重視される非農業部門雇用者数が前月比で4万9000人増加した。ダウ・ジョーンズがまとめた予想中央値は5万人増。ブルームバーグの調査では予想が10万5000人増だった。

1月の失業率は前月の6.7%から6.3%に改善したものの、少なくとも6カ月に渡り失業状態にある割合が失業者全体の39.5%を占めた。2010年4月の45.5%に迫る高水準。ただ、美容師のように仕事と現金収入がありながら失業者に分類されている人が相当数いる可能性がある。

現金での支払いにこだわる人がいる一方で、米国全体では新型コロナウイスが流行する前からキャッシュレス化が進んだ。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米国内の支払い全体に占める現金の割合は2012年の40%から26%に減少。米商務省の統計を引用、去年第3四半期(7~9月)の「デジタル小売売上高」は季節調整後で前年同期比37%増加したとしている。

筆者は現金を使う機会が大幅に減った。ウイルスが付着した可能性がある紙幣や硬貨に触りたくないとの思いもある。家族はアップルペイを利用、個人間送金(P2P)サービスのZELLE(ゼル)を日常的に使っている。現金のやり取りはほぼなくなった。2017年にスタートしたサービスで、世界の1160銀行と提携しているから便利だ。異なる銀行の口座間の資金移動がスマートフォンで簡単にできる。ゼルを運営するアーリー・ウォーニング・サービシーズは今月、2020年に前年比58%増の12億ドルの決済があり、前年比62%増の3070億ドルの送金があったと発表した。

キャッシュレス社会が近いのか。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国政府は、デジタル決済にアクセスできない人がいるため企業に現金決済の停止を認めることはなさそうだと報じた。パンデミックで米国通貨の需要が世界的に高まり、ドル紙幣と硬貨の去年12月の流通量は2.07兆ドルと、1年前の1.79兆ドルから大幅に増加したとしている。

USAトゥデイ紙は、「レスキャッシュが進むが、完全なキャッシュレスは当面ない」とするハーバード大学のマーケティング専門の教授のコメントを引用、キャッシュレス社会はまだ来ないと伝えた。

 

(このコラムは原則、毎週1回配信します)

Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信

著者名

Market Editors 松島 新


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