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カーボンニュートラル社会でもメダル獲得を目指してほしい日本─ 渋澤健(Shibusawa & Company)

※Shibusawa & Company 代表取締役 渋澤 健 氏

Shibusawa & Company
代表取締役 渋澤 健 氏

オリンピック・パラリンピックにはドラマがある

良くも悪くも、今回の東京オリンピック・パラリンピックは歴史に名を残すことになるでしょう。新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染が世界で広まる中、オリンピック・パラリンピック開催中に東京で感染者が更に増えるのは不可避であり、開催は見送った方が無難であると私は思っていました。

一方で、重症者や死者数を抑えることは可能との判断での決断だったと思いますので、賛否両論がある中、関係者のご心労はいかばかりかとお察します。多大なご尽力に心より敬意を表します。改めて考えると、なんとも壮大なロジの組み合わせです。コンディションのピークを迎えている世界の選手にとって、人生最大の勝負のタイミングで競技する場を提供できたことは良かったと思っています。

開催について消極的でありましたが、決行するのであれば、世界中からの選手を温かく歓迎し、健闘を祈り、良い思い出とともに帰国する選手を見送ることが我々日本人として大事なことであると考えておりました。来日した外国人選手らがSNSで投稿している内容からは、日本人の多くのボランティアの方々が、まさにこの精神で彼らに接していた様子が伺えます。同じ日本人として誇らしく、素晴らしいと思いました。

また、やはりオリンピック・パラリンピックには様々なドラマがあります。競技中の本編はもちろんのこと、競技場外の逸話も少なくありません。例えば、メッセージ性がちぐはぐで一般的には評価が高いとは言えなかったオリンピック開会式でも、シリアの紛争下で生き別れになっていた兄弟が、一人はシリア代表選手として、もう一人は難民選手団として再会できたという感動的なシーンがありました。長年の政治的な事情で、国際大会では「チャイニーズタイペイ」という名でしか出場できなかった台湾が、「チ」ではなく、「タ」の国々に挟まれて出場した計らいにも感銘を受けました。敢えてアルファベット順で入場させないことは「ガラパゴス化」なのでは、と当初腑に落ちなかった自分の気持ちが晴れていくのを感じました。

このようにオリンピック・パラリンピックで様々なドラマが生まれてくるのは、オリンピック・パラリンピック自体が世界中から多種多様な人々が集まる、ダイバーシティを活かしたエコシステムであるからではないでしょうか。スポーツですから、そこには画一的なルールが定められています。しかし、オリンピック・パラリンピックの精神であるダイバーシティを活かせるルールがある。だからこそ、そこにドラマを生むエコシステムが生じるのでしょう。

カーボンニュートラル社会のエコシステム

一般的に、欧州勢はルール作りの匠です。恐らく、遠い国の植民地を統治していた歴史的背景もあるのかと想像しています。人類共通の目標を掲げながらも、自国ファーストをしっかりとルールづくりに織り込むしたたかさがあります。例えば、カーボンニュートラル社会に向けてのルールづくりで欧州委員会が4月に公表した「タクソノミー」では、企業が手がける事業の持続可能性を判別する基準が設けられています。このカーボンニュートラル社会を目指す基準では、日本の自動車メーカーが強みを持つプラグインハイブリッド車(PHV)が2026年以降は「持続可能」などの分類から外れる可能性があり、世の中では電気自動車(EV)ファーストという流れが確立しつつあるのです。

しかし、EV単体で見れば「グリーン」かもしれないものの、EVを製造する工程のバリューチェーンを考慮するとどうなのか、以前から気になっておりました。先日、SNSでギル・プラットという科学者がサイエンス・ベースでの観点から同様な意見を発信していることに目が留まりました。ご自身はEVを愛用しながらも、電池製造には多大な資金、自然資源、そして、温暖化ガスを排出しているという現実を指摘されています。また、多様な人々には多様なニーズがあり、世界の人々が同じ社会的環境に置かれているわけではありません。EVの電池を充電する電力が従来の火力発電でしか供給できない社会の場合、全体ではより多くの温暖化ガスを排出しているかもしれないというご指摘です。

プラット氏は、トヨタ・リサーチ・インスティテュートアドバンスト・デベロップメントの会長であり、トヨタ本社のChief Scientist and Executive Fellow for Researchであるというバイアスがかかっているかもしれません。ただ、サイエンス・ベースでEVがカーボンニュートラル社会の実現に万能ではないというご指摘は、その通りだと思います。

私はサイエンティストではありません。でも健全な生態にはダイバーシティが重要であることぐらいは知っています。カーボンニュートラル社会のエコシステムでもソリューションのダイバーシティが重要でありましょう。私は経済学者でもありません。経済学者は外部要因を排除してセオリーをきれいに見せる傾向がありますが、現実社会は外部要因だらけです。トヨタ車のみならず、日本企業はカーボンニュートラルという世界のグレート・リセットにおいて、もっとサイエンス・ベースのナラティブで世界へ積極的に訴えるべきです。ルールづくりの匠は日本の長所ではないかもしれませんが、モノづくりは長所であるはず。その匠の日本人が、カーボンニュートラル社会のエコシステムにおいて役割が無いとは考えられません。

著者名

QUICK Market Eyes 池谷 信久


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