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金高騰が告げる不換紙幣の終焉〜「現金はゴミ」と世界最大のヘッジファンド創業者(快刀乱麻エコノミクス Vol.09)

快刀乱麻エコノミクス

【QUICK Money World 木村 貴】金の価格が高値圏で推移している。国際指標となるニューヨーク先物価格(取引の中心となっている8月物)は先週、一時1トロイオンス1870ドル程度と約1か月ぶりの高値まで上昇した。

NY金先物は2020年8月に2089ドルの史上最高値をつけた。21年は米長期金利の上昇を背景に一時1700ドルを割ったが、22年に入りロシアのウクライナ侵攻をきっかけに再び騰勢を強めた。3月には2000ドルを超え、史上最高値に迫った。

最近の値上がりは、経済指標の悪化を受けて米国の景気後退懸念が高まり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ姿勢が揺らぎ始めたことが理由とされる。しかし根底には、現代の通貨制度が抱える根深い問題がある。

ダリオ氏「現金を手放しなさい」

「もちろん、現金は今もゴミです」。先々週、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加した世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオ氏は、現地で米CNBCテレビのインタビューに対し、こう答えた

ダリオ氏が「今も」と言ったのは、同氏は2020年1月のダボス会議の際も、CNBCの取材に対し「現金はゴミ(cash is trash)」と発言しており、記者から今もその考えは変わらないかと尋ねられたからだ。

同氏は2年前のダボス会議の際、グローバルで分散されたポートフォリオを持つよう聴衆にアドバイスし、その一方で、現金に「飛びつく」ことを戒めた。そして「現金はゴミです。現金を手放しなさい。現金にはまだ多くの資金がとどまっている」と述べた。

ダリオ氏が「現金はゴミ」と切って捨てる最大の理由は、現金の価値である購買力(商品やサービスを購入することのできる能力)が失われることにある。今回のインタビューでも、記者に対し「(現金の)購買力が失われる速さをご存じですか」と問いかけた。

同氏は昨年11月に出版した著書『変化する世界秩序に対処する原則——国々はなぜ興亡するか(Principles for Dealing with the Changing World Order: Why Nations Succeed and Fail)』(未邦訳)で、通貨制度の歴史的な変遷を踏まえ、現金が価値を失う理由について説明している。

これまで数千年の間、通貨制度には三つの種類があった。第一は金貨や銀貨などの硬貨、第二は硬貨を裏付けとする兌換紙幣、第三は特に裏付けのない不換紙幣である。

硬貨は売り手と買い手が互いに知らない間柄や敵同士でも、取引に使えるという利点がある。一方で、大量に持ち歩くのが不便といった弱点があるため、硬貨を安全な場所に置き、それを裏付けとして紙幣を発行するようになる。これが兌換紙幣であり、発行主体はのちに銀行と呼ばれる。

兌換紙幣は当初、銀行に保管された硬貨に見合う量だけ発行されるが、やがてそれを上回る量が発行されるようになる。それによって銀行は貸し出しを増やし、金利収入を多く稼げるからだ。しかし紙幣の発行を増やしすぎると、銀行は人々が硬貨の引き出しを求めて殺到する「取り付け騒ぎ」に対応できず、破綻する。これが中央銀行であれば、破綻以外にもう一つの選択肢がある。硬貨の裏付けを断ち切ることだ。不換紙幣の誕生である。

不換紙幣によって硬貨の裏付けが不要になるから、中央銀行は取り付け騒ぎにおびえることなく、通貨(現金と貸し出し)を好きなだけ生み出せる。その結果、通貨の価値は低下する。つまり、購買力が失われる。ダリオ氏は「歴史が示すように、政府が私たちの財産を守ってくれると期待してはいけない」と指摘する。

主要通貨、約1世紀で97〜99%の価値失う

ダリオ氏は兌換紙幣から不換紙幣への移行が起こった最近の事例として、前回の記事でも触れた、ニクソン・ショックを挙げる。1971年8月15日、当時のニクソン米大統領が突然発表した、金とドルの交換停止だ。当時この発表を聴いたダリオ氏は、「米政府はデフォルト(債務不履行)を行い、それまで知られていたお金は存在しなくなった」と悟ったという。

ニクソン・ショックの後、1973年2月までに戦後の国際通貨体制であるブレトンウッズ体制はほぼ崩壊し、ドルは金の裏付けのない不換紙幣となった。1966年から1977年までの間だけで、世界の主要通貨は金に対して50〜80%程度、価値を失った(金価格が高騰した)。最近も金の値上がりと裏腹に、世界の通貨は価値が低下している。

主要通貨の金に対する価値(1900年=100)

主要通貨の金に対する価値(出所)Matterhorn – GoldSwitzerland

長期では現金の価値毀損はもっと著しい。スイスの資産運用会社マッターホルン・アセットマネジメントの創業者エゴン・フォン・グリュイエール氏が最近の記事で示したグラフによれば、1900年から2020年までの1世紀余りで、世界の主要通貨は金に対してその価値を97〜99%失った。グラフには18世紀フランスの哲学者ボルテールが不換紙幣について述べた、「紙幣は最後には本来の価値、ゼロに戻る」という言葉が添えられている。ダリオ氏でなくても、「現金はゴミ」と言いたくなるだろう。

「ポートフォリオに一定量の金を」

現金が「ゴミ」だとすれば、財産を守るには何に投資すればいいのか。ダリオ氏の持論によれば、選択肢の一つは金だ。同氏は2019年7月、ソーシャルメディアのリンクトインで「お金の価値が低下し、国内外で紛争が激しくなるときにうまくいく、金のようなもの」が有望だと、まるで今日のウクライナ紛争を予見したような文章を書いている。2020年のダボス会議でも「ポートフォリオに一定量の金を持つ必要があると思う」と述べた。

今もその意見は変わっていない。先々週のダボス会議時のインタビューでは、金に直接言及はしなかったものの、暗号資産(仮想通貨)のビットコインを「デジタルゴールド」と呼んで高く評価し、金の代替品として分散投資の対象になりうるとの見方を示した。

一方、株式については「(現金よりも)もっとゴミ」と呼び、投資を避けるよう忠告した。

米通貨供給量で調整した金価格(ドル)

米通貨供給量で調整した金価格(出所)Matterhorn – GoldSwitzerland

高値圏にある金は、投資対象として割高ではないのだろうか。必ずしもそうではないようだ。前出のグリュイエール氏の記事によれば、米国の通貨供給量で調整した金価格は現在、金価格の高騰が始まったニクソン・ショック当時の1971年とほぼ同じ低水準にあるという。

ダリオ氏が著書で述べた考えによれば、通貨制度は硬貨から兌換紙幣、不換紙幣へと変化した後、不換紙幣がハイパーインフレに見舞われ、再び硬貨に戻るという。もしその時期が近いとすれば、金は投資対象としてだけではなく、復権が見込まれる通貨としても需要が高まる可能性がある。

ブレトンウッズ体制の崩壊から約半世紀。金価格の高騰は、不換紙幣の終焉の兆しなのかもしれない。

本連載コラムは、経済に関する素朴な疑問をわかりやすく解きほぐします。

 

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QUICK Money World 木村 貴


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