【QUICK Money World 辰巳 華世】株式関係のニュースを見ていると「SQ」という言葉を見かける時期があります。よく観察してみると、この言葉は頻繁に出てくるわけではなく、ある一定のリズムで注目されていることに気が付きます。今回はSQとは何かという基本的な説明から、先物取引との関係性、SQの算出方法、2022年のSQ決済日、株価への影響について紹介します。
「SQ」と先物取引との関係性
「SQ」とは、Special Quotationの頭文字を取ったもので「エスキュー」と呼びます。日本語では「特別清算指数」です。
日経平均先物や東証株価指数(TOPIX)先物などの株価指数先物取引や株価指数のオプション取引といった、デリバティブ(金融派生商品)取引の最終的な決済期日で決済するための清算価格のことです。
先物取引やオプション取引は、取引できる期間が決まっています。この満期月を「限月」と言います。各限月の取引最終日の翌営業日がSQの算出日となり、満期日前までに反対売買がされなかった場合、特別精算指数(SQ値)で自動的に決済されます。
先物とオプションの両方の清算がある3月、6月、9月、12月の第2金曜日を「メジャーSQ」、それ以外の月の第2金曜日に算出されるものを「マイナーSQ」と呼びます。この「メジャーSQ」は株式市場の注目すべきイベントの一つです。
ここでSQを使う日経平均先物について簡単に紹介します。
日経平均先物とは
日経平均先物とは、日経平均株価を原資産とした先物取引です。先物取引とは予め決められた期日に、特定の商品を予め決められた価格で売買することを約束する取引です。日経平均が上がるか下がるかを予想して期日までに決済を行います。
日経平均先物は、日経平均株価に連動しているので分かりやすく、売買も活発で流動性の高い商品です。また、「売り」から入ることもできるので、相場が下落する局面でも利益を狙うことができます。
日経平均先物の取引単位は、日経平均を1000倍した金額が最低取引単位(1枚)となります。2万8000円を1枚であれば、2800万円の取引です。ただ、先物取引は、反対売買をすることで決済を行う差金決済なので、先物取引が成立した時点では契約のみで金銭の受け渡しはありません。
また、先物取引は、証拠金と呼ばれる担保を差し入れて、自分の資金より数倍から20倍などの大きな取引が可能なレバレッジ取引ができます。なので、2800万円と大きな取引でも、差し入れる証拠金は証券会社にもよりますが20倍以下など、実際の取引額よりも小さな金額になるのが特徴の一つです。先物取引で必要となる証拠金については証券会社によっても異なるので確認しましょう。
日経平均先物取引には「ラージ」と「ミニ」があります。これまで紹介してきた日経平均を1000倍した金額が最低取引単位のものが「ラージ」です。一方、「ミニ」は日経平均を100倍した金額が最低取引単位です。ミニはラージの10分の1で取引ができるため、より少額で取引が可能です。
基本的な仕組みは「ラージ」と同じですが、価格の刻みは異なります。日経平均先物は10円刻みに対し、ミニは5円刻みで価格が変動します。ミニは、100倍の取引をしているので、5円動くと500円の損益が発生することになります。ラージに比べて手数料が少ないです。
SQ値の算出方法
SQ値は、日経平均株価の構成銘柄の始値を元に算出しています。日経平均の始値とは異なりますし、日経平均の始値を計算する方法とも少し異なります。
日経平均の始値は、9時15秒の時点での日経平均の構成銘柄の始値を使って算出しています。すべての銘柄がこの時点で寄り付いている日もありますし、そうでない日もあります。買い気配や売り気配のまま、まだ寄り付いていない銘柄があることもあります。その場合は、9時15秒時点の気配値などを使って算出しています。つまり9時15秒の段階で日経平均の始値は算出されます。
一方、SQ値の場合は、第2金曜日の日経平均採用銘柄の始値で計算されます。例えば、前場は買い気配や売り気配で終わり、後場になって寄り付く銘柄があれば、SQ値は後場になって確定します。その日に気配のまま値がつかなかった場合は、その気配値を使って計算します。
2022年のSQ決済日
メジャーSQは、3月、6月、9月、12月の第2金曜日です。今後迎える9月9日(金)、12月9日(金)前後は、メジャーSQに注目してみましょう。2022年のSQ決済日は以下の通りです。
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日経平均先物・日経平均先物miniの場合の決済
日経平均先物や日経平均miniの取引は期限が決められています。売買最終日までに反対売買で決済されなかった建玉は、売買最終日の翌営業日にSQ値によって自動的に決算されます。建玉とは、取引約定後に反対売買されずに残っている未決済分のことです。
日経平均先物の例でSQ値による決済を見てみましょう。話を簡略化するため、手数料や税金については省きます。
例:2万8000円で日経平均先物(ラージ、ミニ)を1枚売買し満期まで保有した場合のSQ値と損益の関係
○買建ての場合
2万8000円で日経平均先物を1枚買いSQ日まで保有。
SQ値が2万7900円になった場合
損益=(SQ値 − 買った値段)×取引単位×数量
(2万7900円 − 2万8000円)×1000×1枚=−10万円
(10万円の損失)
○売建ての場合
2万8000円で日経平均先物を1枚売りSQ日まで保有
SQ値が2万7900円になった場合
損益=(売った値段 − SQ値)×取引単位×数量
(2万8000円 − 2万7900円)×1000×1枚=10万円
(10万円の利益)
ミニの場合、取引単位100で計算します。
日経平均オプションの場合の決済
日経平均オプションは、売買最終日までに反対売買で決済しなかった場合で、満期日に買い手に利益がある状態である「イン・ザ・マネー」の状態の時、買建玉は、SQ値と権利行使価格の差を受け取ることができます。一方、満期日にイン・ザ・マネーにならなかった時は、買い手が権利放棄(消滅)することができます。この場合、オプション購入代金(支払いプレミアム)が損失になります。
日経平均オプションの例を見てみましょう。
例:権利行使価格2万8000円の日経平均オプションを、プレミアム200円で1枚売買し満期まで保有した場合のSQ値と損益
○コールオプションの場合
コール権利行使価格2万8000円を200円のプレミアムで1枚買い、SQ日まで保有。SQ値が2万8400円だった。20万円の利益となります。計算式は以下になります。
損益=(SQ値−権利行使価格)×取引単位×数量ー支払いプレミアム
(2万8400円ー2万8000円)×1000×1枚−200円×1000円×1枚=20万円
売り建てた場合は、権利行使を受けるため20万円の損失になります。
損益=(権利行使価格ーSQ値)×取引単位×数量+受取プレミアム
(2万8000円ー2万8400円)×1000×1枚+200円×1000円×1枚=−20万円
○プットオプションの場合
プット権利行使価格2万8000円を200円のプレミアムで1枚買い、SQ日まで保有した結果、SQ値が2万7600円になった。20万円の利益がでます。
損益=(権利行使価格ーSQ値)×取引単位×数量ー支払いプレミアム
(2万8000円ー2万7600円)×1000×1枚ー200円×1000円×1枚=20万円
売り建てた場合は、権利行使を受けるため20万円の損失になります。
損益=(SQ値 - 権利行使価格) × 取引単位 × 数量 + 受取プレミアム
(2万7600円 - 2万8000円)×1000×1枚+ 200円×1000×1枚=−20万円
SQ値の発表は日経平均株価にも影響する?
SQ値の発表は、株式市場の注目すべきイベントの一つです。特に先物とオプション取引の決済日で3カ月に1回やってくる「メジャーSQ」が近づくと、SQに注目が集まる傾向があります。
ヘッジファンドなど多くの機関投資家は先物やオプションで大きな取引をしています。SQでは先物やオプションが清算され、損益が確定します。そのため、SQが近づくと、できるだけ有利な水準で決済日を迎えようと思惑的な売買が膨らむと言われています。SQの日は、日経平均が上がりやすい傾向があるとも言われています。
また、メジャーSQは、これまでの先物やオプションが清算されることに加え、新たなポジションを作るタイミングです。そのため、メジャーSQ後の日経平均の動きも注目されます。SQ以降も日経平均がSQ値を上回って推移していると、日経平均が上昇しやすいことが知られています。反対に、下回っていると相場が弱含むと警戒されることがあります。
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まとめ
「SQ」とは、日経225先物など株価指数先物取引や株価指数のオプション取引といったデリバティブ商品を最終的な決済期日で決済するための清算価格(指数)のことです。SQ値の算出方法は日経平均採用銘柄の始値を元に算出しており、SQは日経平均株価にも少なからず影響します。中でもメジャーSQは、株式市場の注目すべきイベントの一つですので、メジャーSQ前後の相場に注目してみましょう。