各社の温室効果ガス(GHG)排出量の変化をどう評価したらよいか。前年に比べ減ったとしても事業活動を縮小した結果だとしたら、企業価値が向上したと評価しづらい。そこで売上高当たりの排出量で比べるのが1つの方法になる。
GHG排出量は二酸化炭素(CO2)に換算した「CO2 換算排出量」で示されるのが一般的だ。各企業のCO2 換算排出量を売上高などで除した指標を「カーボンインテンシティ(炭素排出原単位)」と呼ぶ。GHG排出という、会社が環境に与える負の影響を抑制しながら、いかに事業活動を進めているかを示した指標といえる。
英非営利団体CDPの「Climate Change(気候変動)」の調査では、「スコープ1と2の全世界総排出量について単位通貨総売り上げ当たりのCO2換算トンはいくらか」という質問がある。
分子が排出量なので、値が小さいほど評価が高くなる。売上高以外にも生産数量など事業活動を測る定量データがあるが、ここでは対象となる国内企業を一律に扱うことに加え、先行きを占うため、連結優先の予想売上高を採用する。計算式を整理すると以下のようになる。
予想炭素排出原単位=炭素排出量(トン)÷予想売上高(100万円)
(表1)予想炭素排出原単位(スコープ1、2の合計で算出。8月31日時点)
(表2)予想炭素排出原単位(スコープ1、2、3の合計で算出。8月31日時点)
(出所)予想売上高は各社の開示資料。炭素排出量は各社が英非営利団体CDPの「Climate Change 2021」に記載した値で、第三者による検証・保証がある会社が対象。スコープ2は原則、マーケット基準。CDPスコアはAを最高、D-を最低としてA、A-、B、B-、C、C-、D、D-の8段階でCDPが評価
この指標は予想売上高100万円当たりCO2排出量がいくらかを示す。炭素排出量は、各社がCDPに提出した「Climate Change 2021」に記載したCO2換算排出量を使用した。その値を会社が開示した今期の予想売上高で割って算出した。例えば、3月期決算の会社では、2023年3月期の売上高予想と21年3月期の排出量と組み合わせた形になる。このため、排出した期間と売り上げを見込む期間が異なる。
排出量は自社の工場などからの直接排出である「スコープ1」、自社で使う電力の発電に伴う排出である「スコープ2」、自社の活動に関連する社外排出分の「スコープ3」から成る。スコープ3には「販売した製品の使用」などが含まれ、製造業では比重が大きい。