会社が温室効果ガス(GHG)排出量を増やさないで効率的に利益を稼いでいるかどうか比べる方法もある。本業のもうけを示す営業利益をGHG排出量で割って算出する指標である「炭素利益率(ROC)」だ。
「利益率」と呼ぶが、パーセント表示にしないで、割り算した数値をそのまま比較する。分子が利益なので、数値が大きいほど環境負荷をかけないで付加価値を高めていると評価できる。
丸井グループ(8252)は2018年度に「ビジョン2050」を宣言し、指標の1つとして、営業利益を二酸化炭素(CO2)排出量で割って算出する「環境効率」を掲げた。同社は「ESGデータブック」でGHG排出量などとともに同指標の推移を開示している。
先行きを占うため、今期の予想営業利益を使った。計算式を整理すると以下のようになる。
予想炭素利益率=予想営業利益(100万円)÷炭素排出量(トン)
(表1)予想炭素利益率(スコープ1、2の合計で算出。8月31日時点)
(表2)予想炭素利益率(スコープ1、2、3の合計で算出。8月31日時点)
(出所)予想営業利益は各社の開示資料。炭素排出量は各社が英非営利団体CDPの「Climate Change 2021」に記載した値で、第三者による検証・保証がある会社が対象。スコープ2は原則、マーケット基準。CDPスコアはAを最高、D-を最低としてA、A-、B、B-、C、C-、D、D-の8段階でCDPが評価
この指標は排出量に応じて新たな負担を求められた場合、現状のもうけで賄えるのか、財務の余裕があるのかどうかを示す目安になる。ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)になぞらえた指標と言える。
炭素排出量は各社が英非営利団体CDPに提出した「Climate Change(気候変動) 2021」に記載した値を、予想営業利益は各社が開示した今期予想を使用した。例えば、3月期決算の会社では、2023年3月期の営業利益の予想と21年3月期の排出量とを組み合わせた形になる。
排出量は自社の工場などからの直接排出である「スコープ1」、自社で使う電力の発電に伴う排出である「スコープ2」、自社の活動に関連する社外排出分の「スコープ3」から成る。スコープ3には「販売した製品の使用」などが含まれ、製造業では比重が大きい。