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「お金持ち優遇」でなく「格差是正」を促す政策としてNISA制度の改正─ 渋澤健(Shibusawa & Company)

記事公開日 2022/11/15 17:00 最終更新日 2022/11/15 23:07 資産形成 ガバナンス 渋沢栄一 渋澤健 ETF購入 岸田ノミクス NISA 日銀

Shibusawa & Company 代表取締役 渋澤 健 氏Shibusawa & Company
代表取締役 渋澤 健 氏

臨時国会と共に新しい資本主義実現会議の討議も再開しました。具体的な計画は秋が深まる頃から年末に向けて発表される見込みで、検討しなければならない課題も多く、同会議のメンバーの一人として忙しい日々を迎えそうです。結果、多方面の意見を調整して取りまとめる最終案は総花的であるという批判もあるでしょうが、大事なポイントは「人への投資」というレンズを通じて決定案を評価すべきということだと思います。その観点から今回のレターでは、国民のストックづくりを促進する「資産所得倍増計画」に焦点を当てます。

格差是正

まず、資産所得倍増とは子どもから老人まで全国民がアセットオーナーになる意識を高めることで「格差是正」を促す政策であり、決して一部の「お金持ち」を優遇する制度ではないということを、しっかりと確認すべきです。

現在の資本市場における最大勢力は年金基金です。つまり、資本家階級が労働者階級を搾取する時代は過去の記憶であり、現在では一般の方々がプチ資本家となっている現状があります。一般個人のストック(資産所得)を積み上げる慣習づくりを通じて、経済社会の価値創造への当事者や自分事の意識を高めることで国民の格差是正を目指す施策です。

仮に、増税を通じて格差是正を目指したいのであれば、まさに「お金持ち」に課税すべきではないでしょうか。例えば、5千万円以上など一定の金額を現預金で個人が保有する場合、年率1%程度を「課税」しても良いと思います。2%インフレを容認しても現預金を抱えているのであれば、実施的な負担は限定的であるはずです。

冗談みたいな奇策ですが、過剰な現預金を抱え込む「お金持ち」に強制的にでも社会に「貢献」を促すことは理にかなっていると思います。一方、投資などを通じて他の価値創造を促す「資本家」は格差是正の犯人として罰する対象ではありません。資産所得倍増という底上げ計画によって、日本社会はもっともっと多くの良識ある「資本家」を養うべきです。

簡単で使いやすいNISAへ

岸田首相が先月のニューヨーク証券取引所(NYSE)の講演で「少額投資非課税制度(NISA)の恒久化が必須だ」と言及されたことは重要であり、歓迎いたします。恒久化は「NISAの抜本的拡・恒久化」は資産所得倍増計画の強固なる柱のひとつです。また、恒久化に加え、未成年者にも制度を解禁することが重要です。

こちらの制度拡充について、「難しい」という声が聞こえてきますが、恒久化するのであれば、未成年に解禁する難しさの意味がわかりません。「ジュニアNISA」という制度が2016年に施行されましたが、あまりにも内容が複雑で利用者が伸びず、2023年に廃止されることが決定しています。これは、極めて残念なことです。

0歳から100歳まで、全国民が簡単で使いやすいNISAの制度設計を徹底すべきです。2018年に施行された「つみたてNISA」は簡単な制度設計ではありますが、当初の制度設計では2037年までの非課税運用の期限が設けられました。人生100年における資産倍増計画としては投資期間が不足していることは明らかです。

ただ、つみたてNISAは簡単で使いやすい制度であり、2018年以降、同口座開設は20代・30代という若手が他の年齢層より多いという傾向もあります。つみたてNISAを通じて0歳から人生100年を設計できるように恒久化・未成年者にも解禁することは、新しい資本主義の「人への投資」を象徴する制度になります。

金融リテラシーの向上は不可欠

関連する制度改正では、投資信託の積み立て口座に限り、マイナンバー提出だけで口座開設できるよう投資家保護に関連する法制等の優遇措置を望みます。口座開設の際に、月1,000円を投資信託に積み立てる「個人投資家」が、1億円の株式やその他金融商品を購入する「個人投資家」と同じ書類で手続きしなければならない負担は改善すべきです。マイナンバーカード活用の利便性に光を当て、普及にもつながるでしょう。

投資初心者に適している「つみたてNISA」で投資信託から入り、経験値が高まったところで個別株にもポートフォリオを広めるという意味で、「一般NISA」も活用できるように、両NISA制度を併用する制度改正にも賛同します。

また、税優遇制度だけではなく、資産所得倍増という資産形成の計画によって一般個人の金融リテラシーを高めることは不可欠です。英国ではMaPS(Monetary & Pension Service)という公的法人が設置されているようで、日本でも同様な機関を設立することを検討すべきではないでしょうか。日本全国の多くのファイナンシャルプランナー(FP)は真摯に業務に取り組んでいて、本来であればアドバイザーとして個人側に寄り添う立ち位置が好ましいです。公的法人に属して適切な報酬を得られるのであれば、保険や証券など業者側からの報酬に頼るという歪んだ体制が全国で是正されるでしょう。

「円安」リスク

一方、資産所得倍増が検討されている最中、年末から現在まで、国民の円現預金および円所得が世界で25%も目減りしている現実に日本政府は直視すべきです。現金の「額面」は確実ですが、「価値」は不確実です。物価等のインフレが高まるということは、現金の価値が下がっていることを示します。

日本はインフレがないと思う人々が、専門家を含めて少なくないですが、他の国ではインフレが暴れています。そのため、欧米の中央銀行は金利(お金のコスト)を引き上げています。一方、日本はインフレが無いから金利を上げていない。より正確にいえば、「上げられない」と表現した方が現実でありましょう。日本銀行が抱えている莫大な国債残高が巨大な含み損になるからです。(金利が上がると債券の価格は下がる)

だから、今年の年初から円安が進んだのです。ただ、金利差の「ドル高」はアメリカの景気がいずれ鈍化するので、更なる円安は限られているでしょう。ここからの怖いシナリオは「円安」です。つまり、円通貨の信頼が破壊的に棄損される「円安」に展開するロングテール・リスクの現実化です。これを回避するため、根本的な原因の解決策を政府が検討し、対処すべきだと強く望みます。

日銀のETF買い入れ

特に日銀の株式ETF保有など異次元な金融政策の継続に以下のような重大な課題があります。

  • 償還という出口がないリスク資産である株式ETFを日本銀行のバランスシートから外すことは急務。(ただ、売却すれば、市場に破壊的な影響を与える)
     
  • また、政府系機関である中央銀行がETFを通じて間接的に日本企業の最大な株主になっていることは、「新しい資本主義」が許容すべきでない「国家資本主義」である。日本政府が構造改革の主題として長年進めてきたコーポレート・ガバナンス、すなわちアセットオーナーとしてガバナンスをアセットマネジャーに方針を指示すべきという根本的な概念に大きく矛盾している。

ただ、日本銀行の株式ETF買い入れという異次元な金融政策には、異次元な出口戦略もあります。私の友人の私案をこのレターでも以前ご紹介しましたが、改めて以下に概要を示します。日本銀行の株式ETF買い入れは、「今まで」は問題になっていないと言えるかもしれません。ただ、問題に「なってから」では遅いのです。政府は真剣に、本件のリスクを抑え込むことに努めるべきと強く思います。

⇒ 政府が特別基金を設置し、日銀から株式ETFを引き受ける代わりに基金が発行する永久債を日銀が引き受けてリスク資産をオフバランス化する。特別基金が永久に資産を保有することによって、株式市場の需要バランスが崩れる恐れは無くなる。


⇒ 特別基金を保有する株式ETFを現物化する。

⇒ ガバナンス方針をアセットマネジャーに指示し、企業価値向上を促す。

⇒ 企業から配当を受け取る(年5,000億円~8,000億円規模になるか)

⇒ 配当収入を財源に、上記の金融リテラシーを促す公的法人の運営費に充てる。

⇒ それに加え、「地域中核・特色ある研究大学への支援」など未来世代への投資の取り組みの財源にも活用できる。

著者名

QUICK Market Eyes 池谷 信久


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