【QUICK Market Eyes 山口 正仁】対米ドルで一時150円台まで下落した円相場は足元で円安に歯止めがかかりつつある。米連邦準備理事会(FRB)による利上げペース鈍化の観測および米景気減速懸念から米長期金利が4%を下回る水準で推移していることで、先行き警戒感はくすぶるものの米ドルの上昇にひとまずブレーキがかかった格好だ。海外投資家からみた日経平均株価にあたる「ドルベース日経平均株価」はQUICKが試算した参考値で14日終値は200.64ドルと心理的な節目を一時的に回復した。
え円相場が対米ドルで138~139円台に「揺り戻された」ことで円安がプラス要因と見込まれる下半期の企業業績で、期待される上積み分の減衰、あるいは保守的な予想に対する上ブレ期待が精査される局面を迎えつつあると考えられる。主要企業の決算発表が一巡したことで、3月期企業であればすでに第3四半期(10~12月期)の業績予想修正分を株価への織り込みが進んでいたとみられるが、市場の先行き期待には強弱感が分かれそうな気配だ。
日経平均採用銘柄で、業績予想の前提となる下半期の為替レートで相対的に円安傾向を前提とする銘柄群について、便宜上対米ドルで145円を超える円安を想定する銘柄群を掲出する。日本製鉄(5401)は下半期について150円を想定している。想定より円高水準での推移は、原材料輸入コストなどでプラスに作用する一方、海外事業の邦貨換算での目減りや外貨建て資産の縮小などマイナスにはたらくなど、外国為替の変動は両面性をもつ。
同様に日経平均採用で下半期に対米ドルで円高傾向を前提(便宜上135円未満)とする銘柄群を示す。日本電産(6594)は110円を前提としており、円相場の見通しに「保守的」な傾向が強い。2022年4~9月期連結決算では対米ドルの平均レートは133.97円だった。決算説明資料では対米ドルの為替感応度を売上高で100億円、営業利益は11億円としている。下半期についても業績の上積みへの「のりしろ」が強く意識される。
数字としては保守的な企業でも、キヤノン(7751)は決算期が12月期でやや注意を要する。下半期(7~12月期)の想定レートは133円としているが、第4四半期(10~12月期)は148円を前提としている。決算説明資料によれば、対米ドルで1円変動した際の影響は、売上高で30億円、営業利益で9億円としている。原材料や物流コストが利益の下押し要因と考えられるなか、円安効果が縮小するようなら投資家の厳しい見方につながりやすいとみる。
目先は米インフレ抑制やFRBの利上げペースを横目にする相場展開の大枠が続きそうだが、原油価格やグローバルでの景気減速への警戒など予断を許さない。日本企業と対米ドルの円相場ではトヨタ自動車(7203)が通期と下半期でともに想定為替レートに掲げる135円が、ひとつの「採算ライン」基準として意識されそうだ。