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老後資金2000万円問題、運用と取り崩しでどうなる? ゴールベースアプローチ実践編③(資産形成イロハのイ)

【QUICK Money World 荒木 朋】「貯蓄から投資へ」を掲げる岸田政権の下、資産形成・資産運用への関心が一段と高まっています。個人やその家族の将来の夢を実現するために、その目標(ゴール)を具体化・明確化して、そこから逆算して必要な資金の確保といった計画を立てて資産運用を実践する「ゴールベースアプローチ」という手法が米国で浸透しています。

将来の老後資金や教育資金の積み立て計画、老後に向けた退職金の運用計画などそれぞれのゴールの具体例を設定した上で、オーソドックスな運用とゴールベースアプローチを活用した運用をシミュレーションし、それぞれの特徴やメリット・デメリットなどについて詳しくみていく実践編の第3回は「老後資金2000万円問題、運用と取り崩しでどうなる?」です。

【相談内容】会社員のCさんは59歳の男性。専業主婦の妻(59歳)と2人暮らし(子供2人は自立済み)。もうすぐ60歳の定年を迎え、退職金は1500万円を受け取る予定です。その退職金を使って住宅ローン(残額1000万円)を完済し、残りの退職金500万円と預金1000万円の計1500万円が手元に残ります。この資金を原資に老後30年間の生活を計画していきます。しかし、いわゆる「老後資金2000万円問題」で指摘されている額に500万円足りません。この状況でどういった運用計画を立てていけばいいでしょうか。
なお、Cさんは65歳までは再雇用制度を使って就労する予定で、年収300万円が見込めるため、取り崩し(引き出し)時期は公的年金を受給する65歳以降を想定しています。

■老後資金2000万円問題とは何? 根拠と課題を整理!

そもそも「老後資金2000万円問題」とはどういう問題なのでしょうか。これは、金融庁による2019年6月の金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書の中で指摘された老後資金に関する問題のことです。

厚生労働省のデータによると、高齢夫婦無職世帯(=夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均的な姿でみると、勤労収入や社会保障給付などの毎月の実収入が20万9198円なのに対し、食料や交通・通信などの消費、保険医療などの実支出は26万3718円に上り、5万4520円が足りない計算になります。なお、毎月の不足分については、老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用などの特別な支出は含まない数字です。

収入と支出の差である不足額約5万5000円が毎月発生する場合、不足額は老後20年間で約1300万円、30年間では約2000万円に達する計算です。金融庁はこの毎月の不足額(赤字額)は自身が保有する金融資産より補填することになるとし、老後20~30年間で約1300万~2000万円の金融資産を取り崩す必要があると指摘しました。これが「老後資金2000万円問題」です。

報告書では、老後資金の不安に対して、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるほか、生涯にわたる計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要だと指摘しています。

資産形成・資産運用を検討する背景には「老後資金を貯めたい」「マイホームを持ちたい」「子どもの教育資金に備えたい」など、そこには何らかの目標(ゴール)が存在するものです。その目標への実現性を高めるための資産運用の手法の1つに、「ゴールベースアプローチ」と呼ばれる考え方があります。ゴールを具体化・明確化し、そこから逆算して必要な資金の確保や投資、支出コントロールなどに取り組むというものです。詳しく知りたい方は特設ページを用意していますので、是非ご覧になってください。

ゴールベースアプローチ特設サイト

 

■老後資金2000万円の不足分をどうやって埋め合わせる?

今回は住宅ローン(残額1000万円)の完済後に余った退職金(1500万円)の残り500万円と、預金(1000万円)の合計額1500万円を元手に、65歳以降の30年間の老後資金について、生活資金の不足分に相当する毎月6万円を引き出しながら資産運用するケースで考えてみます。

最初にゴールベースアプローチの仕組みを整理し、それぞれ条件を当てはめることから始めていきます。ゴールベースアプローチは①ゴールの設定・明確化②ゴールに向けたプラン策定③資産運用方法の選択・実行④定期的な確認――の4つのプロセスを実行します。

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Cさんのケースを当てはめると、①ゴールの設定・明確化は「65歳以降の老後30年間について、報告書の中で示された収入と支出の差である平均不足相当額(6万円)を毎月引き出しながらゴールまでの資金を確保する」です。

次の②ゴールに向けたプラン作成では、「住宅ローン返済(残額1000万円)後の退職金(1500万円)の残り500万円と預金1000万円の合計1500万円を元手に、老後生活に必要な資金の不足分として毎月6万円を引き出す。ただし、老後資金に必要とされる2000万円に元手が500万円不足しているため、この不足額を資産運用しながら埋め合わせする」になります。

プラン策定を基にした③資産運用方法の選択・実行では、「老後資金の不足分について、資金を取り崩すと同時に運用して埋め合わせる必要があるため、ある程度のリスクを取って収益獲得を目指す金融商品(投資信託)に投資する」とします。

この場合、株式などリスク資産一辺倒ではなく、債券、不動産など複数の資産(アセット)に幅広く投資しながら、ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品に投資するのが適当となりそうです。投資信託を例にとれば、国内外の株式や債券、不動産投資信託(REIT)など幅広い資産(アセット)を投資対象とするバランス型投資信託が当てはまるでしょう。

これらの条件を基に資産運用をシミュレーションしていきます。

■現金保有・運用なしでは約9年間の不足分が補えない!

まず、現金を保有し、資産運用せずに元手の1500万円から毎月6万円を取り崩していく場合を考えてみましょう。65歳から毎月6万円を引き出すと、20年10カ月(1500万円÷月6万円=250カ月)で資金がゼロになります。つまり、老後30年間の95歳までの9年2カ月間の不足分を補えない計算になります。

銀行預金の場合はどうでしょうか。仮に預貯金の金利を年0.01%で運用すると、元手の1500万円は65歳時点で1500万7494円の増加にとどまります。この資産をもとに65歳から預貯金で運用しながら毎月6万円を引き出すと、85歳10カ月経過した段階で残高は2万2994円まで減りました。銀行預金は現在ほぼゼロ金利のため、預貯金で運用することによる資産寿命は現金のまま保有した場合と比較してほぼ変わりません。現金保有と同じく、95歳までの9年2カ月間の不足分を補えないというわけです。

■投資信託などで運用、老後資金確保にはリターン2%が必要!

次に、ゴールベースアプローチの思想をもとに、投資信託などで資産運用しながら老後資金を取り崩していくケースを考えてみます。

バランス型投資信託への投資により、仮に年率1%のリターンで運用できたとすると、元手の1500万円は59歳から65歳時点までに1576万5132円に増えます。その後、65歳から年率1%で運用しながら毎月6万円を引き出すと、89歳8カ月で残高は1万2889円まで減る計算になります。95歳までの5年4カ月間の不足分は補えませんが、資産寿命は現金や預貯金で保有した場合と比較して3年10カ月延びることになります。

同様に年率2%のリターンで運用した場合では、65歳時点で元手の1500万円は1656万1181円に増えます。65歳から年率2%で運用しながら毎月6万円を引き出すと、95歳時点で47万3554円が余り、今回のゴールである95歳までの老後資金の不足分を補える計算になります。資金の引き出しは95歳7カ月まで可能となり、資産寿命は現金や預貯金での運用と比較して9年9カ月間も延びます。今回のゴール到達には資産運用で年率2%程度のリターンを達成することが必要ということが分かります。

最後に年率3%のリターンで運用した場合をみてみましょう。65歳時点の資産は1500万円から1738万9083円まで増やすことができます。その後、年率3%のリターンで運用しつつ65歳から毎月6万円を引き出しても、ゴールとなる95歳時点で老後資金は739万9149円も残ることになります。資金の引き出し自体は107歳2カ月まで可能となる計算です。年率3%の運用ができれば、老後資金の不足分を補うことができるほか、子どもに相続資産を残すこともできそうです。

■資産運用、年率2%以上のリターンは実現可能な水準?

これまで、資産を毎月一定額取り崩しつつ、投資信託で資産運用しながら老後資金を確保しようとした場合のシミュレーション結果をみてきました。そもそも、資産運用による年率1~3%程度のリターンは実現可能な水準なのでしょうか。参考指標となる数字を挙げておきたいと思います。

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2022年11月4日に発表した2022年7~9月期の運用成績は1兆7220億円の赤字、期間収益率はマイナス0.88%となりました。赤字は3四半期連続となりました。世界的なインフレ懸念や景気後退への警戒感がパフォーマンス悪化につながりました。

もっとも、GPIFが市場運用を始めた2001年度から2022年度第2四半期(22年7~9月期)までの収益率は年率でプラス3.47%を確保しています。GPIFは現在、基本ポートフォリオとして国内株式が25%プラスマイナス8%、国内債券が25%プラスマイナス7%、外国株式が25%プラスマイナス7%、海外債券が25%プラスマイナス6%の範囲でバランスして運用しています。

似たようなポートフォリオで運用するバランス型投資信託などに投資すれば、長期の視点では年率3%前後の運用は必ずしも達成不可能ではない数字といえそうです。

 

■老後資金の取り崩し、早めの運用計画で楽になる!

今回は老後資金2000万円問題で指摘されている毎月の不足相当分を取り崩しつつ、資産運用しながら老後資金を確保するケースについて考えてきました。仮に老後資金が1500万円にとどまっても、年率2%以上のリターンで資産運用できれば、老後資金の必要額を確保できる計算になることが分かりました。言い換えれば、資産運用を行うことで必ずしも退職後の老後資金として2000万円用意する必要はないということです。

ただし、これはあくまでも年率で数%の安定した運用利回りと、毎月の取り崩しによる単純なシミュレーションの結果によるものです。GPIFの運用成績でも分かる通り、過去の収益率は年率3%超でも、直近の3四半期はマイナス収益でした。資産運用は好調な時もあれば低迷する時もあり、いつも安定してリターンをあげられる保証はないということを示しています。

こうしたリスクを避けるため、長期・積立・分散といった資産運用の基本に立ち返って、運用計画を早めに立てるのはとても重要といえそうです。今回取り上げた老後資金の確保や支出を考える場合でも、早いうちに運用計画を立てることで長期投資の効果はより発揮されることになり、退職後の資金の取り崩し期においても、より余裕を持ったプランを検討することが可能になるからです。

その際、資産運用の目的を明確にするためにも、ゴールの目標と期間をあらかじめ設定するゴールベースアプローチの考え方はとても有効です。ゴールベースアプローチの仕組みを理解し、皆さんの資産運用計画にぜひ役立てて下さい。

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QUICK Money World 荒木 朋


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