【NQNロンドン=菊池亜矢】英小売大手テスコ株が持ち直している。足元で2022年10月に付けた昨年来安値を28%ほど上回り、1月18日には一時250.70ペンスと約4カ月ぶりの高値を付けた。クリスマス商戦が好調だったほか、インフレによる顧客の節約志向を捉えた戦略が奏功している。
テスコが12日に発表した直近19週間の既存店売上高(1月7日時点、付加価値税やガソリンなど除く)は前年同時期に比べ6.4%増えた。クリスマス期間(6週間)の売上高が7.9%増と好調だったほか、昨年10月に開始した価格据え置きキャンペーンにより、対象となった自社ブランド商品や限定商品の販売が増えた。
ケン・マーフィー最高経営責任者(CEO)は「顧客の買い控えは続くものの、価格据え置きが数量面で寄与し、高単価のプレミアム商品の販売も増えるなど両方で成長した」と強調する。足元でも想定通りの動きとみて、23年2月期通期の利益予想を据え置いた。小売事業の営業利益は前期比6~9%減の24億~25億ポンドを見込む。高インフレで減益となるものの、市場では見通しの据え置きが好意的に受け止められている。
テスコは低価格の日用品を多くそろえることで数量の拡大を目指す戦略をとる。市場調査会社カンタールによると、英国の22年10~12月の食料品雑貨市場のシェアは27.5%で首位。2位のセインズベリー(15.5%)を大きく引き離す。23年初には新しい価格据え置きキャンペーンを発表。調味料や紅茶などの定番から日用品に及ぶ1000以上の商品について、4月のイースター(復活祭)まで現行の価格で販売すると決めた。
金融サービスの英ハーグリーブス・ランズダウンは「価格凍結は非常に成功した戦術」と評価しつつ「スーパーマーケット業界は価格競争によるマージン低下が続いている。インフレによる消費意欲の圧迫が、支出にどう推移するかは読みにくい」とみていた。昨年秋までの下げが大きかっただけに、戻りが一巡したあとは上値が重くなる可能性もある。