【NQNニューヨーク=稲場三奈、横内理恵】
■インテル大幅続伸、「半導体市況は最悪期脱した」との見方で
16日の米株式市場で半導体のインテル(INTC)が3日続伸し、一時は前日比6.5%高の30.27ドルを付けた。サスケハナ・ファイナンシャル・グループが16日に投資判断を「売り」から「中立」に、目標株価を23ドルから26ドルに引き上げた。悪化していた半導体市況の最悪期は過ぎたといい、市場シェア拡大を期待した買いが入った。
担当アナリストは、競合相手のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)のパソコン市場でのシェアが伸び悩んでいること、インテルの新製品などの良好な見通し、在宅勤務用パソコンの在庫調整が進んだことを考慮した。半導体業界全般に対して「消費者、パソコン、(スマートフォンなど)ハンドセット向けの半導体の在庫水準は正常化し、需要も回復するだろう」と予想する。半導体に続き、資本財や自動車など幅広い銘柄の投資判断引き上げも第2弾として考えているという。
インテルの同業のクアルコム(QCOM)の投資判断も「中立」から「買い」に、目標株価は130ドルから140ドルに上方修正した。1月と2月の中国でのハンドセットの販売が好調だったといい、在庫問題は残るものの中国の経済活動再開に前向きな見方を示した。これを受け、16日の株価は一時、4.5%高の120.71ドルを付けた。
同リポートが半導体株全体の買いを誘い、16日はエヌビディアやAMDも大幅高となった。
■スナップ8%高、米政府がTikTok親会社に売却を指示
16日の米株式市場でSNS(交流サイト)のスナップ(SNAP)が反発し、一時は前日比8.1%高の11.18ドルを付けた。米政府が動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)にティックトックの株式売却を指示し、従わない場合は米国での利用を禁止する可能性があると警告したと15日に報じられた。利用禁止が現実味を帯び、競合するSNSには追い風となるとみた買いが入った。
15日の米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、外国企業の対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が安全保障の観点から売却を指示したという。これを受け、ティックトックは「売却は安全保障上の問題解決にならない」と主張し、中国政府によるアクセスや影響から米国の利用者データを保護するため15億ドル規模の安全策を講じると誓ったようだ。
ティックトックは若者を中心に約1億人の米国人が利用しており、膨大なデータが中国に流出していると懸念されている。7日には米国での利用を禁じる法案が米上院に提出されるなど、規制強化の動きが強まっている。利用禁止になれば、同アプリへの利用者の流出に悩まされてきた競合相手に恩恵をもたらす。16日の米株市場ではSNSのメタプラットフォームズやピンタレスト、動画投稿サイト「ユーチューブ」を運営するアルファベットも上昇する場面があった。
■米地域銀株への売り再燃、預金流出の懸念くすぶる
16日午前の米株式市場で地域銀行の急落が続いている。ファースト・リパブリック・バンク(FRC)は一時、前日比36.5%安の19.80ドル、ウエスタン・アライアンス・バンコーポレーション(WAL)は16.4%安を付ける場面があった。シリコンバレーバンク(SVB)などの相次ぐ破綻を受け、預金保険の対象外の大口預金の残高が大きく、SVBと似た預金構成となっている銀行の脆弱性が懸念されている。
格付け会社のS&Pグローバル・レーティングとフィッチ・レーティングスが15日にファースト・リパブリックの発行体格付けをともに投機的水準へと引き下げた。預金が法人や富裕層に偏り、1口座当たり25万ドルを上限とする預金保険の対象外の預金残高が全体の68%に上ることから顧客の預金引き出しリスクが高いとみる。
16日にフィッチはウエスタン・アライアンスの「トリプルBプラス」の格付け見通しを「ネガティブ」とした。現時点の自己資本比率などは適切とみるが、金融市場の混乱が想定外の流動性不足につながる可能性があると指摘した。
米金融当局は12日に破綻したSVBなどの預金の全額保護と資金供給策を発表した。ただ、一部地銀については預金流出と信用状況悪化による資金調達コストの上昇で、苦境が続くとの懸念が強い。地銀株全体の値動きを示す「S&P地銀株指数」に連動する上場投資信託(ETF)「SPDR S&P地銀ETF」(@KRE/U)は前日までの1週間で2割あまり下げた。
16日午前にウォール・ストリート・ジャーナル紙(電子版)がJPモルガン・チェースなど大手行がファースト・リパブリックへの支援を検討していると報じた。報道を受けて一部地銀株には上げに転じたり、下げ渋る動きもみられる。