【NQNニューヨーク=戸部実華、矢内純一】
■メタが4%高、米国でのTikTok利用禁止の観測で
23日の米株式市場でSNS(交流サイト)のメタプラットフォームズ(META)が反発し、一時は前日比4.0%高の207.88ドルを付けた。中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国での利用が禁止される可能性が意識され、競合するSNSに追い風になるとの見方から買いが入った。他のSNS関連株も買われ、スナップ(SNAP)は9.6%高の12.11ドルを付ける場面があった。
米連邦議会は23日の公聴会で、中国政府への利用者のデータ流出の懸念を追及した。証言に臨んだティックトックの周受資・最高経営責任者(CEO)は「いかなる政府からも影響を受けない」などと情報提供を否定した。米議員らは中国政府のデータアクセスや内容操作などを巡り、厳しく迫る場面もあった。
公聴会を受け、ウェドブッシュ証券のダニエル・アイブス氏は「米国内での利用禁止を探る動きが強まるだろう」とみる。実際に禁止されれば「メタやスナップは明らかに恩恵を受ける」と指摘した。前週には米政府がティックトックの親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)にティックトック株の売却を指示し、従わない場合は米国での利用を禁止する可能性があると警告したと伝わっていた。アイブス氏はバイトダンスが応じないなら「年後半にも禁止されそうだ」という。
■ブロックが22%安、「口座の40~75%が虚偽」と空売り投資家が指摘
23日の米株式市場で決済サービスのブロック(SQ)が大幅続落し、一時は前日比22.2%安の56.50ドルを付けた。空売りで知られる米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチが23日、ブロックの個人向け送金・金融アプリ「キャッシュアップ」が多数の虚偽ユーザーを抱えている疑惑を指摘した。経営問題に発展しかねないと警戒した売りが殺到した。
ユーザーの拡大がブロックの市場評価を高めてきたが、ヒンデンブルグのリポートによると「キャッシュアップのアカウントの40~75%が偽物、不正行為に関与している、または1個人が保有する追加アカウントだ」と主張する。銀行口座を持たない犯罪者がマネーロンダリング(資金洗浄)などに利用でき、犯罪を助長していると批判している。
ヒンデンブルグは1月にインドの財閥アダニ・グループの会計不正を主張し、同社の株価は急落した。米国でも2020年に電動トラックメーカー、ニコラが標的になった経緯がある。
■コインベースが20%安 SECから証取法違反で警告
23日の米株式市場で暗号資産(仮想通貨)交換業のコインベース・グローバル(COIN)が急落し、一時は前日比20.3%安の61.51ドルを付けた。22日に米証券取引委員会(SEC)が強制措置を講じる前に通知する「ウェルズ通知」を受け取ったと発表した。SECは証券取引法違反の可能性があると警告しており、経営を巡る先行き不透明感から売りが広がった。
コインベースによると、顧客がプラットフォームで取引しているデジタル資産や、顧客が保有する仮想通貨を預け入れて報酬を受け取る「ステーキング」のサービスなどが調査対象とみられる。今後は民事訴訟や行政処分につながる可能性がある。コインベースは「我々の資産やサービスの適法性に自信があり、必要であれば法的プロセスを歓迎する」との考えを表明。製品やサービスの提供は通常通り続けるという。
発表を受け、オッペンハイマーは投資判断を「買い」から「中立」に引き下げた。「不健全な規制環境下で法的措置の公平性への懸念を強めている」といい、金融システム不安もくすぶるなかで成長が抑制されかねないとみる。米国みずほ証券は「コインベースの売上高の3分の1に影響する可能性がある」と分析。訴訟の行方などはみえないが「株価に大きくのしかかる」と指摘した。投資判断「売り」、目標株価は30ドルで据え置いた。