【ＮＱＮニューヨーク＝横内理恵、川上純平】

■ネット通販のＪＤドットコムが10％高　アリババに続き、分社化計画
30日の米株式市場で中国ネット通販の京東集団（ＪＤドットコム）（JD）の米預託証券（ＡＤＲ）が大幅上昇し、一時は前日比9.7％高の45.16ﾄﾞﾙを付けた。30日に不動産部門と工業製品の流通などを手掛ける部門を分社し、香港取引所に上場する計画を明らかにした。主力のネット通販事業への注力と、子会社上場による企業価値の向上を期待した買いが入った。

　30日に米証券取引委員会（ＳＥＣ）に開示した資料によると、同日に香港取引所に不動産のＪＤプロパティと工業製品のＪＤインダストリアルズの２社の上場を申請した。上場後もＪＤは両社の発行済み株式の50％以上を保有し、子会社として維持する。分割により、「投資家がＪＤドットコムや分社化した子会社の企業価値を適正に評価しやすくなる」と説明した。経営や財務の透明性も向上するという。

　28日には同業のアリババ集団が主要６部門に分割する計画を発表し、同日の米株式市場では同社のＡＤＲが12％上昇していた。中国政府の締め付けが強まるなか、成長性の追求と規制面の逆風を和らげる両面から企業分割を模索する動きが続いているとみられる。


■ウォルマートが続伸　エバコアＩＳＩが投資判断引き上げ
30日午前の米株式市場で小売りのウォルマート（WMT）が続伸し、一時は前日比1.6％高の146.60ﾄﾞﾙを付けた。エバコアＩＳＩが30日に投資判断を「中立」から「買い」に引き上げた。デジタル化や非中核事業からの撤退、経営効率改善などが今後２年間の客足増と利益率の向上につながると指摘した。小売業界が減速するなかでも、中長期的な業績改善が見込めるという。目標株価は145ﾄﾞﾙから160ﾄﾞﾙに引き上げた。

　2023年の米国の既存店売上高の伸び率が業界全体の見通し（３％）を上回ると予想した。米国店舗の客足の回復傾向がみられ、24年には来店者数が新型コロナウイルス禍前の19年の水準に戻る可能性があるという。

　インフレで価格競争力が高まっており、コロナ禍で低下した食料品販売などのシェアも過去２年間で回復しているという。現在1000万人以上が利用しているとみられる、年額98ﾄﾞﾙで店舗から無料配送などを受けられるサブスクリプション（継続課金）型サービス「ウォルマート＋（プラス）」の高所得層の利用が今後数年で急拡大する可能性もあるという。

■高級家具のＲＨが一時５％安　住宅販売鈍化で需要低迷
30日の米株式市場で高級家具販売のＲＨ（RH）が３営業日ぶりに反落し、一時は前日比4.8％安の234.00ﾄﾞﾙを付けた。29日夕に発表した2022年11月～23年１月期決算で売上高が市場予想を下回った。同時に示した24年１月期通期の見通しもさえず、嫌気した売りが出た。

　22年11月～23年１月期の売上高は前年同期比14％減の７億7249万ﾄﾞﾙと、ＱＵＩＣＫ・ファクトセットが集計した市場予想（７億7730万ﾄﾞﾙ）を下回った。米連邦準備理事会（ＦＲＢ）の利上げで住宅ローン金利が上昇した影響で住宅販売が鈍り、家具の需要が低迷した。24年１月期通期の売上高見通しも29億～31億ﾄﾞﾙと市場予想（34億4000万ﾄﾞﾙ）に届かず、当面は苦戦が続くとの見方も相場の重荷となった。

　決算を受け、グッゲンハイム証券は在庫調整などによる採算悪化の傾向が続くと予想し、目標株価を375ﾄﾞﾙから325ﾄﾞﾙに引き下げた。キーバンク・キャピタルは「高級住宅市場の減速圧力と（シリコンバレーバンクなどの破綻による）銀行危機という新たなリスクが家具需要の重荷となっている」と指摘した。

　ＲＨ株は売り一巡後に下げ渋り、上げに転じる場面もある。３月は前日まで18％安と調整が進んでいたことから、目先の悪材料が出尽くしたとみた買いが入っている。