【日経QUICKニュース(NQN) 大貫瞬治】テレビ広告などマスコミ4媒体の広告市場が縮小するなか、大手広告代理店である電通グループ(4324)や博報堂DYホールディングス(HD、2433)がDX(デジタルトランスフォーメーション)支援やITシステム関連業務などを含むコンサルティング分野の強化を進めている。収益基盤の多角化を進める狙いだが、競合が多いコンサル市場でどのような競争力を発揮できるのかに市場の注目が集まる。
経済産業省が15日発表した3月の特定サービス産業動態統計で、広告業のうちテレビや新聞などのマスコミ4媒体の売上高は前年同月比8.6%減と14カ月連続で減少した。広告市場は国内総生産(GDP)の成長率に比例するとされる。脱コロナで日本経済が回復基調となるなかでもマスコミ4媒体の広告市場は低迷が目立つ。
テレビCMに強みを持つ大手広告代理店は、マスコミ4媒体の市場縮小に危機感を強めている。そこで着目したのが、広告とは市場構造が異なるコンサルだ。
電通グループは顧客企業のDX化支援や人事・会計などのITシステムに関わる業務など、幅広いコンサル関連事業を強化している。コンサルなどを手掛ける「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」事業が売上総利益に占める割合は、31.5%(2022年1~3月期)から34.6%(23年1~3月期)にまで伸びた。
博報堂DYHDはオンラインとオフラインを横断した顧客管理サービスなどの提供や商品開発も手掛ける。23年3月期の「マーケティング実践領域」の売上高は1910億円と、前の期から7.5%増となった。
広告代理店には顧客定着率の向上やデジタル領域の強化など、広告配信にとどまらないサービス提供を求める声が顧客企業からこれまでも出ていた。そうした領域を包含するコンサル関連事業の強化は「景気動向やクライアントの短期的な業績に左右されづらい事業構造をつくれる」(電通グループ幹部)との期待もある。
ただ野村総合研究所(4307)やベイカレント・コンサルティング(6532)など、コンサル関連の競合は多い。「広告代理店がコンサルでどのような競争力を示せるのか不透明」(国内中堅証券)という声もある。
SMBC日興証券の前田栄二シニアアナリストは「広告代理店が持つ消費者データや各産業の大企業とのコネクションは競争力につながる」と指摘する。大手広告代理店の株価上昇のためには、コンサル事業がもたらす業績への好影響を数字で示す必要がある。