【NQNニューヨーク=矢内純一、戸部実華】
■カーニバルが反発 クルーズ業界の好調続くとの見方
25日の米株式市場でクルーズ船のカーニバル(CCL)が3日ぶりに反発し、一時は前日比5.2%高の11.22ドルを付けた。シティグループが25日付で投資判断を「中立」から「買い」に、目標株価を10ドルから14ドルに引き上げた。カーニバルのバランスシート悪化リスクの低下や投資家の関心の高まりを指摘した。
担当アナリストは「昨秋の新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動規制が撤廃された後、クルーズ業界は盛り上がりが続いている」と指摘。減速する兆しがみあたらず、他のレジャー産業とは対照的だとみていた。その中でもカーニバルはとりわけ好調だという。
カーニバルの財務面では、現在の回復が続けば「現在から2025年末までの間に、(長期借入金などの)負債が350億ドルから290億ドルに減少する」と予想していた。「足元で関心を持っているのはほとんどがヘッジファンドだが、(中長期保有を前提とする)ロングオンリーの投資家も再び買い始めているようだ」と投資家層の広がりに言及。収益の改善も相まって追い風になるとみていた。
■ダラーツリーが一時17%安 24年1月期の利益見通し引き下げ
25日の米株式市場で1ドルショップのダラーツリー(DLTR)が大幅安となり、一時は前日比16.8%安の129.26ドルを付けた。25日発表の2023年2~4月期決算で売上高は市場予想を上回った。一方で、1株利益は市場予想を下回った。24年1月期の利益見通しも下方修正し、売りが優勢となった。
2~4月期決算では売上高が前年同期比6%増の73億1950万ドルと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(72億8000万ドル)を上回った。来店客数が増加したことで、郊外で幅広い所得層を対象とする小売りチェーン「ダラーツリー」の既存店売上高が3%増えた。低所得層が多く利用する「ファミリーダラー」は客数増に加え、客単価も伸び、既存店売上高が7%増となった。
特別項目を除く1株利益は1.47ドルと市場予想(1.52ドル)を下回った。盗難被害の増加に加え、利幅の少ない商品に消費者の関心が向かっていることで利益率が低下した。同様の理由で24年1月期の利益見通しを下方修正した。1株利益は5.73~6.13ドルと従来の6.30~6.80ドルから引き下げ、上限でも市場予想の6.64ドルに届かない。売上高は300億~305億ドルとした。従来の299億~305億ドルからレンジの下限を引き上げた。
■エヌビディアが一時28%高 「生成AIの波、想定より早く到来」との声
25日の米株式市場で画像処理半導体(GPU)のエヌビディア(NVDA)が急騰し、一時は前日比27.7%高の389.95ドルと上場来高値を付けた。24日夕に発表した2023年2~4月期決算と5~7月期の業績見通しが市場予想を上回った。人工知能(AI)向け半導体の需要の急拡大を追い風に力強い成長が見込めるとして、アナリストによる高評価が相次いだ。
2~4月期の売上高は前年同期比13%減の71億9200万ドルと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(65億3000万ドル)ほど減らなかった。部門別ではAI向けを含むデータセンターが14%増え、全体を下支えした。特別項目を除く1株利益は1.09ドルと市場予想(0.92ドル)を上回った。併せて示した5~7月期の売上高見通しはレンジの中央値で110億ドルと、市場予想(71億7000万ドル)を大きく上回った。
ジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は決算説明会で「企業は生成AI時代に向け、(AI計算やデータ分析など膨大な処理を高速に行う)加速コンピューティングの導入を競っている」と話し、「我々は急拡大する需要に応じるために供給を大幅に増やしている」と述べた。コレット・クレス最高財務責任者(CFO)もAI向け半導体の需要拡大で「データセンターの見通しは数四半期先までみえるようになった」といい、下期に大幅な供給増に備えていることを明らかにした。
決算発表を受け、ウェドブッシュ証券は投資判断を「中立」から「買い」に、目標株価を290ドルから490ドルに引き上げた。業績見通しの大幅な予想上振れを受け「AIの革命は始まった。エヌビディアはこの革命で中核となる心臓と肺の役割を担う」と表現した。
バークレイズは投資判断を「買い」で据え置き、目標株価を275ドルから500ドルに上方修正した。「生成AIの波は想定よりも早く訪れた。エヌビディアはこの流れに対応できる『解決策』として唯一準備が整っているようにみえる」との見方を示した。JPモルガンは目標株価を250ドルから500ドルと2倍に引き上げ、投資判断は「買い」を維持した。「生成AI向けの需要の最初の大きな波が押し寄せてきた。そしてさらに続く」と分析した。
エバコアISIは強い見通しを受けて「『WOW!』との驚きの言葉しか出ない」といい、「供給制約も続くなかで予想上振れの度合いは驚きだ」とAI向けの需要の強さに驚嘆を示した。投資判断は「買い」を維持し、目標株価は320ドルから500ドルに引き上げた。