【NQNニューヨーク=川上純平、横内理恵】
■シエナが続落 23年10月期見通し引き下げに失望の声
6日の米株式市場でネットワーク機器のシエナ(CIEN)が続落し、一時は前日比12.7%安の41.49ドルを付けた。6日に発表した2023年2~4月期決算は市場予想を上回る内容だったものの、23年10月期通期の見通しは下方修正した。業績の先行き不安から売りが出た。
23年2~4月期の売上高は前年同期比19%増の11億3270万ドルとQUICK・ファクトセットが集計した市場予想(10億9000万ドル)を上回った。主力のネットワーク機器が好調だった。供給網の混乱の影響が薄れたのも業績を押し上げ、特別項目を除く1株利益も0.74ドルと市場予想(0.61ドル)以上だった。
6日の決算説明会では23年10月期通期の業績見通しを引き下げたことを明らかにした。売上高は18~22%増と、従来予想(20~22%増)から下限を下方修正した。中央値は20%増と市場予想(21.5%増)を下回る。経営陣は「一部の顧客が商品の出荷を遅らせるよう求めてきたのが要因だ」と説明した。ただ、4月に通期予想の維持を発表したばかりとあって、市場では「失望を誘う下方修正だ」(Bライリー)との指摘があった。
■ギットラボが一時31%高、決算や見通しが予想上回る AI活用で
6日の米株式市場でソフトウエア開発のギットラボ(GTLB)が急伸し、一時は前日比30.7%高の46.28ドルを付けた。5日夕に発表した2023年2~4月期決算や24年1月期通期の業績見通しが市場予想を上回った。人工知能(AI)機能の積極的な活用が収益の追い風となるとの見方から、前回の四半期決算発表後に強まった成長鈍化懸念が和らいだ。
2~4月期の売上高は前年同期比45%増の1億2687万ドルと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(1億1780万ドル)を上回った。新規顧客増が寄与し、主力のサブスクリプション(継続課金)事業が好調だった。最終赤字は5246万ドルと、赤字幅は前年同期(2609万ドル)から拡大した。ストックオプション(自社株購入権)関連の費用が響いた。一方、特別項目を除く1株損益は0.06ドルの赤字で、赤字幅は市場予想(0.14ドル)よりも小さかった。
24年1月期の売上高見通しは5億4100万~5億4300万ドルと、従来予想(5億2900万~5億3300万ドル)を上方修正した。市場予想(5億3270万ドル)を上回る。1株損益の赤字予想も従来見通しから縮小した。5~7月期の業績予想も市場予想を上回った。
決算資料では「マクロ経済環境の不透明感にもかかわらず、効率性と生産性の向上、技術革新の加速を模索する顧客企業がAIを活用した我々のプラットフォームに関心を向けている」と説明した。ギットラボは企業のソフトウエア開発の高速化を図る手法「DevOps(デブオプス)」に強みがある。
決算を受けて多数のアナリストが目標株価を引き上げた。FBN証券とトゥルイスト証券はともに目標株価を50ドルから60ドルに上方修正した。FBN証券は「4月上旬の値上げが顧客の解約につながっていない」と指摘した。DAダビッドソンは「懸念されていたよりも高い成長だった」とし、目標株価を35ドルから45ドルに引き上げた。ニーダムは決算説明会で経営陣が「受注動向が見通しやすくなった」と指摘したことを評価した。
■コインベースが急落 SECが提訴、経営に不透明感
6日の米株式市場で暗号資産(仮想通貨)交換業のコインベース・グローバル(COIN)が急落し、一時は前日比20.9%安の46.43ドルを付けた。米証券取引委員会(SEC)が6日、未登録の交換所運営に携わったなどとしてコインベースを提訴した。経営の先行き不安から売りが膨らんだ。
SECはコインベースの事業が投資家保護に反すると判断した。ゲンスラー委員長は6日発表の声明でコインベースについて「証券法の対象になるにもかかわらず、交換所やブローカー、クリアリングハウス(取引を決済する清算機関)といった機能を混在させ、不法に提供した」と指摘。「適切な情報開示やSECによる監査など重要な保護を投資家から奪っている」と批判した。
コインベースを巡っては、SECが3月に強制措置を講じる前に通知する「ウェルズ通知」を出していた。一方、米国内には仮想通貨に関する明確な法規制がない。これに対して、コインベースは4月に規制の明確化を求めてSECを提訴していた。
SECは5日にも仮想通貨交換業最大手のバイナンスを提訴しており、仮想通貨事業者への締め付けを強めている。米国みずほ証券のアナリストはこの動きを受けて、SECの監視が強化されることにより「コインベースの売上高の30%がリスクにさらされる可能性がある」と分析。投資判断「売り」を再表明していた。