【NQNニューヨーク=横内理恵、川上純平】
■カジノ株が下落 ウィン一時3%安、マカオ事業の回復が鈍いとの見方
8日の米株式市場でカジノ株が下落し、ラスベガス・サンズ(LVS)が一時前日比2.9%安の56.79ドルを付けた。同業のウィン・リゾーツ(WYNN)も3.1%下げる場面があった。ジェフリーズが8日に両銘柄の投資判断を「買い」から「中立」に引き下げた。マカオ事業の回復が想定よりも緩やかで、収益の上振れが見込めないと指摘した。
マカオのカジノ収入が新型コロナウイルス流行前の2019年の水準に戻る兆しがないという。4~5月のカジノ収入は19年の37~40%にとどまり、23年1~5月も19年の60%程度だったという。富裕層の出張に伴うカジノ収入が19年の46%に落ち込んでいることが背景にある。
収益改善よりも株価の上昇ペースが速く、バリュエーション(投資尺度)からみた値ごろ感が薄れていると指摘した。ラスベガス・サンズの目標株価は従来の69ドルから65ドルに、ウィン・リゾーツは135ドルから114ドルに引き下げた。ラスベガス・サンズのシンガポール投資拡大やウィンのラスベガス事業の好調は評価した。
マカオ事業はラスベガス・サンズの売上高の約6割、ウィン・リゾーツの約4割を占める。
■アドビが5%高 AI対応の新サービスを発表
8日の米株式市場でソフトウエアのアドビ(ADBE)が4営業日ぶりに反発し、一時は前日比5.3%高の440.63ドルを付けた。8日、人工知能(AI)に対応した新サービスを発表した。株式市場でAIが有力な投資テーマとして意識されるなか、投資家の物色がアドビに向かった。
新たなサービスは企業向けに展開し、生成AIが要望に沿った画像やプレゼン資料などデジタルコンテンツの作成を補助する。アドビは今後、顧客の特性に応じたコンテンツの必要性が企業の間で増すとみており「(アドビのサービスを利用することで)費用を最適化しながらコンテンツの作成を加速できる」と説明している。
アドビはAI関連銘柄の一角としてこのところ上昇基調にあり、7日終値は昨年末に比べ24%高い水準となっていた。8日にはドイツ銀行がアドビの目標株価を430ドルから500ドルに引き上げた。「中期的に、技術革新や価格決定力の強さなどを背景に利益を獲得し続ける」と評価。生成AIがアドビの収益拡大につながる可能性についても言及した。アドビは15日に2023年3~5月期決算を発表する。
■中古車ネット販売のカーバナが一時30%高、業績見通しを上方修正
8日の米株式市場で中古車ネット販売のカーバナ(CVNA)が急伸し、一時は前日比30.1%高の20.21ドルを付けた。8日の投資家向け説明会に併せて2023年4~6月期の業績見通しを上方修正し、業績回復への期待が強まった。
4~6月期について、販売台数1台あたりの特別項目を除く売上高総利益が「6000ドルを超える」との見通しを示した。前年同期比63%増で、過去最高になるという。5月上旬の1~3月期決算発表時の「5000ドル超」から引き上げた。1~3月期は4796ドルだった。
4~6月期の特別項目を除くEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)は5000万ドル超を見込む。従来は「黒字になる」との予想を示しており、1~3月期まで赤字が続いていた。自動車ローン債権の売却や証券化も進めており、23年に入って売却もしくは証券化した債権は20億ドルと、5月上旬の13億ドルから拡大した。
発表資料では「経営再建の取り組みの良い影響が想定よりも早いペースで表れている」と指摘した。カーバナはM&A(合併・買収)などの事業拡大を続けるなかで中古車市場の減速に直面した。多額の債務を抱え、利払い負担増などもあって業績が落ち込んでいた。昨年から大幅なコスト削減や債務再編などに着手している。株価は22年に98%下落し、一時は3ドル台まで下げていた。株価は今年は戻り基調となっており、7日までに約3倍となっていた。