【日経QUICKニュース(NQN)】日銀の植田和男総裁は25日、大阪市で開かれた大阪経済4団体共催懇談会に出席した。出席者との懇談で、為替相場について「経済・金融のファンダメンタルズ(基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要だ」と述べた。そのうえで「政府と緊密に連携しつつ、為替市場の動向やその経済・物価への影響を十分注視していきたい」とも語った。
資源高や円安が経済に及ぼす影響について「業種や企業規模、経済主体によって不均一であることは強く認識している」と語った。これらの不均一性に配慮しつつ「経済・物価情勢をしっかり点検したい」との考えを示した。
2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現には、賃上げの継続が「極めて重要だ」と改めて強調した。今年の春季労使交渉(春闘)で示された賃上げの動きが「さらに強まっていくかに注目している」と話した。
■内田日銀副総裁「粘り強く金融緩和を継続する必要」
日銀の内田真一副総裁は25日、都内で開かれた全国証券大会であいさつした。金融政策運営については、「2%の『物価安定目標』の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っていない」として「粘り強く金融緩和を継続する必要がある」と述べた。
また、7月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化した狙いを「YCCの枠組みによる金融緩和の持続性を高めること」とした。国内外の経済や金融市場を巡る不確実性が高いなか「経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現する」との方針を示した。
日本の景気については「緩やかに回復している」と述べた。海外経済の回復ペースは鈍化しているものの、輸出や生産は供給制約の影響の緩和に支えられて横ばい圏内での動きとなり、企業収益が全体として高水準で推移していることや「雇用・所得環境は、緩やかに改善している」と指摘した。
日本の経済・物価を巡る不確実性は「きわめて高い」との考えも示した。リスク要因として海外の経済や物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動などを挙げた。そのうえで「金融・為替市場の動向やわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある」と指摘した。