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ベトナムのM&A市場活況、経済成長が後押し HSBCレポート

HSBCベトナム ホールセール・バンキング統括責任者のウィンフィールド・ウォン(Winfield Wong)氏が、活発なベトナムのM&A(合併・買収)についてリポートします。

■過去最高の案件数、FTAも好機に

2017年に過去最高の案件数を記録したベトナム国内のM&Aは、投資家の旺盛な投資意欲にけん引されて一段と伸びようとしている。力強いGDP成長、良好な人口動態、そして国有企業を株式会社化する計画が豊富に控えていることなどが投資環境を後押ししている。投資家はベトナムが抱えるいくつかの課題をこれまで以上に十分に認識する必要があるが、好機を捉えるためには素早く行動するべきであろう。

ベトナムはアジア地域で最も活発なM&A市場の一つである。2017年の取引金額は、前年比175%増加して102億米ドルに達した。代表的なものとして、タイの飲料最大手タイ・ビバレッジが国営ビール大手サイゴンビール・アルコール飲料総公社の株式の54%を48億米ドルで取得した案件や、シンガポール拠点の自動車販売会社ジャーディン・サイクル・アンド・キャリッジが乳製品製造大手ビナミルクの株式の8%を9億米ドル超で取得した案件が挙げられる。2018年も勢いは持続し、1~6月の取引金額は35億5000万米ドルに達して前年同期比155%増となっている。

さらにベトナムのM&Aは、大規模案件の成立と案件数の増加にとどまらず、一段と深く広範に進展している。昨年は消費財や小売、インフラ、不動産、鉱工業といった広範なセクターにおいてM&A案件数が過去最高に迫った。

成功をけん引している要素として、まずベトナムの堅調なマクロ経済がある。2017年の経済成長率は前年比6.81%に達し、2018年と2019年の成長率はいずれも同6.7%と予想される。ベトナムは世界で最も速いスピードで成長している経済圏の一つである。この力強い経済を支えているのは中間層人口の急速な増加であり、ボストンコンサルティンググループは2020年までにベトナム国内の中間層は倍増し3300万人に到達すると予想している。

政府が多くの国々と自由貿易協定(FTA)を結んだことも好機を生み出し、投資家はベトナムへの投資に一段と前向きになっている。


■待ち受ける400社あまりの民営化

さらに、政府が積極的に国営企業の民営化を進めていることがM&A増加の最も重要な要因であることは間違いない。

政府は国有企業株式の取得を投資家に促している。政府計画では、財政収入の増加と政府支出の削減を念頭に400社あまりの国有企業の株式を売り出すことになっている。建設やテクノロジーといった業種への一段と多岐にわたる投資機会が提供されることになる。

国有企業の民営化案件をテコにM&A市場の発展が加速すれば、ひいては外国人投資家の増加を通じてベトナム企業のガバナンスが向上することにもなる。世界銀行が世界190カ国・地域の起業のしやすさなどを順位付けするビジネス環境ランキングの2018年版で、ベトナムは2017年版から順位を14位上昇させて68位に躍進。これは外国人投資家の増加が寄与したと考えられる。

2017年はベトナムのM&A市場でタイ企業の活動が特に活発だった。HSBCはタイの投資家が参加した最大級の案件の数多くで主導的役割を果たした。具体的にはフランスの流通大手カジノ・グループのリード・ファイナンシャル・アドバイザーを務め、大型スーパーのBig Cベトナムをタイ最大の流通系コングロマリットのセントラル・グループに11億米ドルで売却する案件を主導した。また同じくタイのサイアム・シティ・セメントがスイスの建設資材大手ラファージュホルシムのベトナム事業の65%を取得する案件では、サイアム・シティ・セメント側のファイナンシャル・アドバイザーを務めた。取引金額は8億7500万米ドルと、ベトナムの建設資材セクターでは過去最大の案件となった。

■標準ルールづくりや情報開示、規制緩和などに課題も

このようにベトナムに対する投資環境は進歩している一方で、投資家は引き続き多くの課題に直面している。

現在のベトナム政府は、国有企業の民営化の成功事例などから色々なことを学んでいる段階で、標準的なルールや手法はまだ定まっていない。理由の一つは、民営化の戦略的目標と目的がそれぞれの国有企業ごとに異なるからである

ベトナムでのM&Aにおいて、得られる情報は先進国市場と常に同水準とは限らない。投資家は買収先のバリュエーションの確認を十分に行うことも必要である。幸いベトナム政府はこうした投資家の懸念に配慮し、取引プロセスの合理化や情報の利便性向上、規制緩和などに取り組んでいる。

グローバルな投資家の中には、ベトナム国内の投資家とチームを組んで投資する戦略を進める動きもある。また投資家は、国内市場に十分な地歩を築いて総合的なサービスを提供できる銀行を選ぼうと考えるだろう。

ベトナム市場に長く関わってきたHSBCは、M&Aアドバイザリーや買収ファイナンス、キャッシュ・マネジメント、カストディをはじめとする銀行サービスの全てを包括的に備えており、投資家の要求を十分に満たすことができる立場にある。さらにHSBCはベトナム市場を深く理解しており、投資家が現地の規制を把握する際に手助けしたり、現地のステークホルダーと取引を進めたりするうえで優位な立場にいると自負している。ベトナムのM&A市場で2014年から17年まで、M&Aアドバイザリー業務を提供する銀行として首位に立ったのは、長い年月をかけて獲得した専門知識の賜物だ。

様々な課題があったとしても、ベトナムでの投資機会が損なわれることはない。ベトナムが投資対象として最も躍動的で刺激的な市場であることは、皆が認識している。ベトナムのM&A活動が今後数年にわたって、ますます活発になることは確実である。

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