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証券営業の凄腕たち【Episode7】足と耳で書く中小型株リポートが信頼の源=最終回

Episode7……藤井京子氏 いちよし証券

  • ふじい・きょうこ
    1991年東海大卒、三洋証券(当時)入社。98年1月いちよし証券入社、梅田支店配属。09年10月枚方支店、11年12月赤坂支店、17年4月から東京支店(現銀座支店)。三洋証券時代から約30年にわたり個人営業を担当。現在は同支店の資産アドバイザー三課。大阪府出身

日経QUICKニュース(NQN)=神宮佳江

今回の「証券営業・私の戦略」は、中小型株の分析・営業に強みを持つ、いちよし証券の藤井京子さん。1991年から証券営業を担当し、相場の乱高下や業界の浮沈にさらされつつも、同社の圧倒的な中小型株のリサーチ力と顧客に寄り添う営業対応の徹底で信頼を得ている。

17人で560社、分厚いリサーチ

――中小型株の販売で印象に残っていることはありますか。

当社では時価総額3000億円未満の中小型株について、17人のアナリストで約560社をリサーチしています。他社に比べ圧倒的に厚い布陣だと思います。創業社長の話を聞いたり地方の工場に出向いたりして作成した詳細なリポートは、当社の武器になっています。営業担当も会社の歴史や創業者の思い、実際の商品を理解することで、お客様に具体的な説明ができます。

今ほど有名でなく、規模も大きくなかった中古車販売会社の社長さんが営業支店を回り、経営戦略などを説明してくれたことがあります。「中古車は乗っていた人の思いがあるので、扱いには細心の注意を払う」ことや「子育て世代、高齢者などニーズにあった商品を少しでも安く買えるような流通システムを作りたい」といった思いをお客様に伝えると、「応援したい」と株を買ってもらいました。

半導体ウエハーの研磨剤で世界トップシェアを持っていた化学品会社をお客様にどう紹介しようか悩んでいたところ、自社のアナリストリポートでサプリメントの材料なども手掛けていると知りました。まずはそのサプリメントを見せて身近に感じてもらった後、研磨剤の成長性を納得してもらって株を買ってもらったこともあります。

――現在、中小型株への関心は高まっているのでしょうか。

大型株のニーズの方が高いのが実際です。「いちよしの強みが中小型株」ということをご存じのお客様が少なく、営業担当が強くアピールする必要を感じています。一方、中小型株は外部環境に左右されにくく安定成長が見込めるとして、海外機関投資家からのリポート需要や年2回実施しているアナリストの銘柄説明会への国内機関投資家の参加は相当増えていると聞いています。

――中小型株は大型株に比べ株価変動が大きく、リスクの高い商品でもあります。

確かに中小型株の値動きは相場環境に左右され、短期だと大きなリスクもあります。しかし、多くの銘柄を組み入れたファンドにすると、もし1社が上場廃止になっても他社が安定的に成長すればリスクを減らすことができます。ITバブルが崩壊する前に組んだ中小型株のファンドで現在、基準価格が当時の2~3倍になっているものもあります。ファンドだとリスクを取りにくいお客様向けにも選択肢が広がります。

電話口の第一声で20~30人の声を聞き分ける

――顧客対応面においてご自身の強みは何だと思いますか。

お客様の要望に合わせ、寄り添うような気持ちで担当することです。連絡の頻度として毎日や1週間ごとに連絡を求める方もいます。頻繁にやりとりするお客様とはだんだん家族や友人のような関係になってきます。よく連絡をしている方なら20~30人程度は電話口の第一声でどなたかわかります。同じ方でも声の感じがいつもと違うと気づくこともあります。そういう時に「どうされましたか」と聞くと、色々と相談が出てくることがあります。

ある上場会社の役員だったお客様は、ご病気で退職されてから親しくさせていただいていたのですが、ある時に奥様とお嬢様を連れて来店され「資産運用以外のことでも悩みがあればこの人に相談しなさい」と言ってくださいました。その少し後に他界されたと聞き、そこまでの信頼をいただいたことをうれしく思いました。別のお客様のお嬢様からは「私(藤井さん)のような職業に就きたい」と進路相談を受けましたし、離婚のような家族問題の相談も受けたことがあります。お客様からの信頼をいただくことが営業の基本と思います。

――相手に合わせるだけでは営業成績は上がりにくいのではないですか。

もちろん、預かり残高を増やすよう目標を立てて、達成を目指すわけですが、このときもお客様の性格に合わせています。ストレートに商品の利点を伝えることもあれば、投資環境を話してヒントを感じてもらうということもあります。商品がお客様のニーズに合っていれば、とにかく多くの方に声を掛けるようにしています。とことんやり続けることが苦にならない性分なので、商品情報の伝達ははかなりの件数をこなしています。

――証券業界はまだ「男性社会」のイメージも強いですが、以前と比べた業界内の変化は感じますか。

実は男社会で働いてきたという認識はあまりありません。営業の外回りは極端に体力が必要なわけではないですし、勉強して得た知識は成績につながっていきます。株価下落局面ではお客様から厳しい声もありますが、誠意をもって対応すれば理解してもらえます。イメージとは異なり、男女の区別なく力を発揮できる業界だと若手の時から思っていました。今は育児休業や有給休暇が取りやすくなり、女性にとってより働きやすい環境になっていると思います。

藤井さんが営業の根幹に据える「相手に合わせて寄り添うこと」は、相手の心を読む能力に長じているゆえに可能になることだろう。ちょっとした顧客の心の機微を敏感に感じ取り、真摯に対応することで、値動きが荒い傾向もある中小型株の販売でも幅広い信頼を得ている。課長として、4人いる部下と飲みに行く時も「こちらから誘うことはあまりないが、相手の行きたい雰囲気を感じたら声を掛ける」という。社内でもプライベートでも「寄り添うこと」に徹底しているのだろう。証券営業のプロフェッショナルは、人心掌握術のプロでもあると感じた。

=おわり

※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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